リーダーの時間



いよいよ始まった……棒倒しが。
E組の彼らにとってはこれが一番の目的だろう。なんたって勝たなければ磯貝は退学の可能性がある。仲間を大事にする彼らが勝ちを取りに行くのは当然の行動だろうね。


「それにしても……」


相手であるA組には、明らかに日本人ではない体格の人間がいる。……ま、考えなくても分かる。学秀が用意した駒だろうね。何としてでもE組に勝ちたいという意思が良く伝わるよ。


「随分良い身体をした奴らばかり集めたな」

「え」

「うん?」


日本人ではない男共を見てブツブツ言っていると、隣にいた桃花が引いた声を出した。何だ、僕をそんな目で見ないでくれるかな。


「まさか名前って、あーいう人がタイプなの……?」

「はぁ?」


何をどう聞いたらそう受け取れるんだ……と思ったが、何となく察しが付いた。僕が男共を見て良い身体をしていると言ったからか。勝手にイコールで繋げないでくれるかな。というより、前に僕の好みは伝えたはずなんだけどなぁ……。


「僕のタイプはほどほどの筋肉が付いている方だ。あそこまで筋肉があるのは無理」

「そ、そうなんだね」

「だからと言って貧弱も嫌だ」

「条件厳しいね……」


何の条件なのかはさっぱりわからんが、まあいいか。


「勝つ為には手段は選ばない。そこは共感できる部分だな」


だが、そこまでして負けたくない理由が理解できない。

なぁ学秀。君は一体何を理由に勝ちたいんだい?
僕がほしいなんて対価は、その場で思い着いた適当なものだろう?

……さっきから時折こちらに視線を寄越しているけど、バレていないとでも思ってるのかい?
僕の目をあまり舐めないでほしいね。


「さて、あの相手に対しどう策を練ったのか……僕に見せておくれよ」


次に僕が視線を移した所にいたのは、このクラスを率いるリーダーだ。
僕は結果を大事にする人間だけど、その結果に至る過程も嫌いじゃない。ま、僕が気に入ったならの場合だけれどね。



***



「勝った……勝ったよ〜っ!!」

「見れば分かる。だから抱きつくな、熱い」


棒倒しの結果はE組勝利で幕を閉じた。まあ、僕としては指示を飛ばしてくる側が優秀だと動きやすいからね。あの勝負を見てどっちを指揮者に選ぶかと問われたら、僕は磯貝を選ぶね。


「どこに行くの?」


その場を後にしようとしたとき、陽菜乃が僕を呼び止めた。


「なんだ。いちいち言わなくちゃいけないのか?」

「だって気になるんだもん」

「それにそれに! 磯貝君戻ってくるよ?」

「そりゃ戻ってくるだろう。ここはE組の待機場所なんだし」

「そうじゃなくて!!」


じゃあ何なんだ……。陽菜乃に加え、岡野や莉桜も加わったし。そう思いながら横目でとある人物を追う。
……ちょっとからかいに行きたいだけなんだけどなぁ。


「それもそうですが、もうすぐ閉会式ですよ」

「あ、そっか。棒倒しが最後のプログラムだったもんね」

「やな場所に入れてくるな、あいかわらず」


なんだ、これから閉会式か。サボったら……ダメか。そう思いながら僕はクラスメイトに着いて行く形で集合場所へと向かった。





2022/10/13


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