名前の時間

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体育の時間


「『野球バカ』、野球バカ! ターゲットに動きはあるか!?」

「まだ無しだ、『美術ノッポ』。『堅物』は今、一本松の近くに潜んでいる。『貧乏委員』チームが堅物の背後から追い込み、『ツンデレスナイパー』が狙撃する手筈だ!」


野球バカこと杉野が、美術ノッポこと菅谷に状況報告をする。

現在、ターゲットである堅物こと烏間は姿を隠して警戒状態。
そこを貧乏委員こと磯貝チームが包囲し、ツンデレスナイパーこと速水で攻撃、という流れのようだ。


「(よし、いくぞ!)……!」

「甘いぞ、2人! 包囲の間を抜かれてどうする! 特に『女たらしクソ野郎』、銃は常に撃てる高さに持っておけ!!」

「くそ……ッ! 逃がすか!」


烏間が磯貝と女たらしクソ野郎……前原の間を駆けて行く。
作戦失敗だ。


「『キノコディレクター』、『神崎名人』、『ゆるふわクワガタ』! そっちへ行ったぞ!!」

「まっかして〜! ……あっ、方向変えた!」


前原の声にキノコディレクター……三村、神崎名人……神崎、ゆるふわクワガタ……倉橋がそれぞれ動く。
倉橋の元へ向かってくる烏間に向け、彼女は銃を構えた。
しかし、横へと方向転換してしまい、彼女の射程から消えてしまった。


だが、烏間が向かった先には当然待ち構えている者が潜んでいた。


「『ホームベース』、『へちま』、『コロコロ上がり』!」

「おう!」

「……っと、地上に注意を引き付けて……!」

「!! ……やるな、『鷹岡もどき』」


鷹岡もどきこと寺坂の声でホームベース……吉田、へちま……村松、コロコロ上がり……イトナが前に出る。
その隙に木の上に潜んでいた寺坂が狙撃。

その攻撃は中心から外れたが、ターゲットに命中した。


「だが足りない! 俺に対して命中一発じゃ、到底奴には適わんぞ!! 『毒メガネ』、『永遠の0』! 射程が見えていては当然のように避けられるぞ!」


烏間の視界の先には、隠れていた毒メガネ……奥田と永遠の0……茅野が潜んでいた。
しかし、隠れていることを見破られてしまった今、潜む理由はなくなった。


「気づかれた……そっちでお願い、『凛として説教』!」

「オーケー! 行くよ、『ギャル英語』と『性別』!」

「了解!」

「了解っ」


茅野の声に凛として説教……片岡が飛び出す。
彼女に続いてギャル英語……中村と性別……渚が飛び出した。


「!(今度は射手の位置を特定させない巧みな射撃だ。凛として説教の指揮能力だな。背後から距離を保って隙を窺う……『変態終末期』と『このマンガがすごい!』もなかなかのものだ)」


片岡の指示による射撃の攻撃が、烏間を襲う。
しかし、弾を軌道を読み烏間は全て躱し、背後の岩で射程から逃れた。

だが生徒達もそこは読んでいたようだ。
烏間の背後から変態終末期……岡島とこのマンガがすごい!……不破が忍び寄っている。
残念ながら烏間には2人が迫ってきていることに気づいているが。


「(『中二半』が退路を塞いだ! 最後は頼んだぞ……『ギャルゲーの主人公』!)」


なのに何故、その場から動かないのか。
それは中二半ことカルマがそこで銃を構えているからだ。

これで烏間の意識は周りに向いているはず。
磯貝は目線をギャルゲーの主人公……千葉がいる方へと向けた。
そこにはライフルを構えた千葉が烏間をロックオンしていた。


小さな銃声が鳴り響く。
発射された弾は真っ直ぐ烏間の元へと飛んでいったが……烏間には命中ならず。


「!?」

「ギャルゲーの主人公! 君の狙撃は常に警戒されていると思え!」


どれだけ周りに狙う者がいようとも、烏間の警戒は千葉に向けられていたようだ。
千葉が撃った弾はそこらに堕ちていたのだろう木の皮で防がれてしまったのだ。


「(……分かってます。だから、仕上げ・・・は俺じゃない)」


千葉が人差し指を下へ向ける。
その意味は……


「!」

「『ジャスティス』!」


ジャスティス……木村への指示だ。
上から降りてきたのは、二丁の銃を構えた木村だった。

烏間は咄嗟の事で動けず、その背後を許してしまった。


「ふ〜ん、これが連携による暗殺、ね」


これまでの工程を全て見ているだけだった傍観者は、澄んだ青色の瞳を木村へと向ける。
どうやらここまでが、生徒達が計画した流れだったようだ。


「なら、もう自由にしていいよね」

「!!」


突然上から降りてきた何か。
それは烏間の元へと急接近したと思えば、両手に銃を構えたまま、まるでナイフを扱っているかのように振りかざしてきた。


「っ、来たか……『性別マント』!」

「一通りの流れは終わった。なら、今度は私のお相手をお願いします」


性別マントと呼ばれたその人物は、名前だ。
どうやら最後の仕上げである木村が攻撃を外した際に動く予定だったようだ。
しかし、木村が攻撃を決めてしまったため、その出番はなかった。

だから後は好きにさせて貰おう、という訳で飛び出してきたわけだ。


「君が真っ先に来る事も考えたが、まさか最後まで出てこないとはな」

「何もなくてつまらないので、一発その身体に弾を当てさせてもらえませんかねッ!」


銃を振りかぶり、相手に逃げる隙を与えない。
躱すことだけで頭をいっぱいにさせる。


「中々やりますねッ」

「単独で攻撃してくるとは。だが、それで奴に勝てるのか?」

「それはその時……ちゃんと考えてあります。今は堅物……あなたとの勝負です」


突如銃を手放した名前。
それは突然のように見えて自然に落ちていく。

そう、これは視線誘導だ。
今まで苛烈な連続攻撃は、意識を銃へと集中させるため。


「!」


押しつけられた銃口。
名前はそのトリガーを迷わず引いた。


「……ハンデはあろうとも、今回は私の勝ちですね」

「最初から勝負などしてないんだが……」


至近距離からの発砲。
名前が烏間から銃口を離せば、そこにはオレンジ色のインクが広がっていた。





2022/01/11


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