名前の時間

side.赤羽業



「あれれ〜? そういえば名前って、殺せんせーのなーんて呼んでたっけ〜?」

「く……っ! おのれ、カルマ……!」


態と顔を近付ければ「こっちを見るな!」的な顔で俺を睨む名前。
殺せんせーが言う『未だ3名ほど殺せんせーという名前で呼んでくれない人達』の1人、名前だ。

残り2名はビッチ先生と烏間先生だ。


「あ、確かに〜」

「苗字は殺せんせーの事ターゲットって呼んでたな」

「まあ間違っちゃいねーけどさ」


それにしても、どうして殺せんせーと呼ばないのだろうか。
まさかビッチ先生と烏間先生と同じく恥ずかしいから?


「じゃあ呼んでみよっか。せーの、殺せん…」

「言えるか!!」


折角一緒に言ってあげようとしたのに、名前はそれを全力で否定した。


「生徒で私の名前を呼んでくれないのはあなただけですよ、苗字さん」

「僕にとって名前は正直どうでもいい。判別さえできればいいんだ」

「確かに名前はそういうものですが、先生はこの名前で呼ばれたいんです! ターゲットなんて物騒じゃないですか!」

「でも、間違ってないだろ」


どうやら名前は、維持でも殺せんせーの事を名前で呼びたくないらしい。


「なんで呼びたくないの? 恥ずかしいから?」

「この僕に恥じらいがあるとでも? ふん、そんなもの暗殺では不要、邪魔だ。あるわけがない」

「なら呼べるよね。せーの…」

「だから嫌だと言っている!!」


恥ずかしいわけではない、と本人は主張している。
確かに表情からは恥ずかしがっているようには見えない。
じゃあなぜ殺せんせーと呼ばないのだろうか。


「呼べない理由でもあるの?」

「理由?」

「うん。だって頑なに殺せんせーの事名前で呼びたくないみたいだし」


渚君の質問に名前は目を逸らす。
……何か理由があるのは間違いなさそうだ。


「……いずれ殺す相手だから。それだけだ」

「そんな理由でしたか。でもそれはこのクラスにいる者全員が思っていること。名前を呼べない理由にはなりませんね」

「うぐっ」


殺せんせーの発言に名前はビクッと肩を震わせる。
呼べない理由を否定されて焦っているようだ。


「さあ私の名前を呼んでください! まさか、私の名前を知らないなんて言わないですよね?」

「うぅ……」


今までこんなにも「ピンチ!」みたいな表情をした名前を見た事があっただろうか。
明らかにどうしよう、と逃げ道を探そうとしている。


「さあ苗字さん!!」

「……………………こ、」

「こ!」

「…………………こ、ころ……」

「さあ次!!」

「…………も、もう無理!!」


そう言ってしゃがみ込んだ名前。
どうやら耐えられなくなったらしい。


「あれれ〜? 苗字さんは負けることが嫌いだと聞きましたが、これが負けたことになるのでは〜?」

「う、うるさい! それに、名前を呼ばないだけで負けにはならない!!」


まるで『負け犬の遠吠え』のように見えるこの光景。
名前が負けず嫌いなのは分かったけど、どうしてそこまで殺せんせーを名前で呼べないのか。

俺はそのことが気になってしかたなかった。





2022/01/10


prev next

戻る














×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -