堀部糸成の時間



「待っていたよ。……レオン」

「……シロ」


後を追って走り続けること数分。
来る事を分かっていたとシロは僕に向かってそう言った。

そこには道ばたに放られた堀部イトナがネットを被って転がっていた。


「まさか君がイトナと繋がりがあるとは思わなかったよ」

「……兄弟設定。あれ、触手だけの話じゃないだろ」

「おや、何の事かな」


しらばっくれるつもりか。
そもそも僕についてやたら詳しいのも、イトナに兄弟設定を適用させたのも、僕が___


「イトナ君、苗字さん!」

「! ターゲット」


聞こえた声に後ろを振り返ったときだ。


「!?」


突然、着用していたマントを奪われた。
それと同時に謎の光が僕とターゲットを襲った。


「ぅぐッ!?」


……動けない!
もしかして、これも___


「ああああああああっ!?」

「苗字さん!!」


考える暇を与えないとでも言うように、僕の身体に覆い被さった白いネット。
それが意図的に項へ押しつけられた瞬間、激痛が体中に走った。



「苗字さんに何を!」

「まさか、ここまで見て気づかないのかい? なら教えてあげるよ、殺せんせー。レオン、苗字名前は___その身に触手を宿している」


シロから告げられた事実。
その言葉が終わると同時に激しい痛みから解放された。

膝を着いていた僕だが、それすらも維持できないほど身体が言う事を聞いてくれなかった。


「苗字さんが……触手を……」

「さて、ようやく捕まえる事ができたんだ。大人しく来て貰おうか」


僕が地面に倒れると、シロと同じ服を着た人間が僕を抱えた。
そして、トラックの荷台へと放り込んだ。

身体へのダメージが大きすぎて、身体を動かすこともできない。
……まさか、読まれていたなんて……。


「待ちなさい! 苗字さんを返しなさい!」

「嫌だね」


シロの言葉と同時に、ターゲットへの攻撃が始まる。
ターゲットは後ろにいる堀部イトナに攻撃が当たらないように攻撃を躱している。

……僕はそれを見る事しかできない。
あの時のように。



「……ごめんなさい」


ごめん……なさい……っ。


「出来損ない妹で……ごめんなさい___兄さん……っ」


何かが頬を流れた感覚を最後に、僕の意識はそこでなくなった。





2021/11/28


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