暗殺者レオンの目的
side.潮田渚
「殺せんせー!!」
「! ……皆さん」
黄色い大きな超生物…殺せんせーの背中を見つけ、僕は大きな声で名を呼んだ。
突然殺せんせーが何処かへ飛んで行ってしまったから追いかけてきた事を伝えた。
「そうですか。すみません、何も言わずに」
「それで……なんで急に飛び出していったの?」
気になっていた疑問を殺せんせーにぶつける。そういえば殺せんせー、何か抱えている……?
背を向けていた殺せんせーがこちらをゆっくりと振り返った。殺せんせーが抱えていたのは……女性だ。
目を閉じてはいるが、苦しそうに呼吸をしている。格好はビッチ先生が着ている程露出度は高くないけど、パーティードレスを着用していて……
「ナマエ!!!」
殺せんせーに抱えられた女性に向かってビッチ先生が叫んだ。……苗字さんの名前を。
「その女の人が、名前……?」
「ええ、間違いないわ!!」
どうやら苗字さんは自分の変装した姿を撮った写真をビッチ先生に送っていたらしい。だから、殺せんせーに抱えられている女性は苗字さんで間違いないと言う。
「ナマエ!ナマエ!!しっかりしなさい!!」
「落ち着いて下さいイリーナ先生。先程確認しましたが、どうやら足を怪我しているようです。皆さん、ホテルに戻って部屋を1つ貸し出して貰って救急箱を貸して貰えるようにフロントにお願いしに向かってください。内容は伝えずに」
「部屋は良いわ。私の部屋に寝かせて頂戴」
「分かりました。では救急箱だけお願いします」
「分かりました!」
僕達は殺せんせーの指示に従い、急いでホテルへ戻った。
あまり騒ぎにならないようにと行動したが、残念ながら苗字さんが怪我をしたことはクラスメイト全員に知れ渡ってしまった。
***
磯貝君がフロントから救急箱を借りた直後、ビッチ先生と苗字さんを抱えた殺せんせーが戻ってきた。殺せんせーは正面から入れないため、ビッチ先生に割り当てられた部屋の窓から入る事に。
「殺せんせー、救急箱を借りてきました!」
「ありがとうございます、磯貝君」
僕達はビッチ先生の部屋のドアから覗き苗字さんの様子を見ようと試みるが、殺せんせーの背中で隠れてしまって見えない。
見えているのは唯一クラスメイトの中で部屋に入っている磯貝君と、部屋主のビッチ先生、応急手当をしている殺せんせーだけだ。
「よし、これで良さそうですね」
「じゃああんた達は出て行って。ナマエの看病は私がするから」
「ビッチ先生できんの〜?」
「舐めんな!!それくらい出来るわよ!!」
煽るようにビッチ先生に言ったカルマ君だが、表に出さないだけで内心ずっと苗字さんの事を心配しているはずだ。
「ほら、ガキ共!さっさと寝なさい!!」
「「「は〜い……」」」
……と言われても落ち着かない。
苗字さんが心配だ。
依頼が入っているから、と苗字さんは僕達が起きてきて殺せんせーが完全防禦形態から元の姿に戻ったのを確認した後、すぐに去ったと聞いていた。
そういえば苗字さん、一睡もしていないって言ってた……!
人間はある程度の睡眠を取らないと実力を十分に発揮出来ないとかどうとか聞いた事がある。もしそれが影響して怪我を負ってしまったのだろうか……。
「騒がしいと思ったら……まだいたの?」
「だって心配だし……」
「心配ならここに溜まらないでくれる?ナマエが気になって眠れないって言ってるわ」
「え、起きてるの!?」
「少し前にね」
どうやら手当を受けている間に目を覚ましたらしい。
苗字さん本人が言っているんだ。彼女の邪魔にならないように部屋に戻ろう。
「ビッチ先生、名前にお大事にって言っておいて」
「ええ。だから早く部屋に戻りなさい」
それぞれみんな自分に当てられた部屋へ戻る。
僕はブーブー言っているカルマ君の背中を押しながら部屋に戻っているとマグカップを持った磯貝君が向こうから歩いて来た。
「あれ、磯貝君。それは?」
「ああこれ?さっき部屋に入って苗字を見てたんだけど……顔が赤くて熱っぽかったからさ。喉渇いてないかなって思って」
磯貝君が手に持っていたのは水が入った部屋に備え付けのコップだ。どうやら救急箱を戻してくるついでに持ってきたらしい。流石イケメン……。
「じゃあ俺も行く〜」
「さっきビッチ先生に追い返されたばっかりだよカルマ君」
「むー」
カルマ君の気持ちは分かるけど、今はゆっくり休んでほしいから苗字さんが言っていたように部屋の前にいるのは止めておこう。
上手くカルマ君を説得した後、ビッチ先生の部屋に向かった磯貝君を見送った。
2021/04/04
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