第3節「雄英体育祭:後編」



「あれ、かっちゃんだ!」


観客席に戻っているとかっちゃんがこちらへ歩いて来ていた。
私の声に向こうも気付いたようだ。


「もう試合始まるの?」

「まだ」


準備運動でもしておきたかったのかな?
なら邪魔してはダメだ。そう思って応援の声をかけてその場を離れようとした。


「やっぱりあの日、お前を見込んだのは正解だった」

「?」


急に言われた言葉に首を傾げる。
自分より身長が高いかっちゃんを見上げる。


「上がって来いよ、決勝戦まで。……そこで決着を付けようや」


恐らく私と上鳴君の試合を見ての言葉だろう。
ニヤリと笑う彼につられ、私の口角も上がっていく。



「負けないでよね」

「こっちの台詞だ」


これが、私達なりの応援。かっちゃんがどう思ってるか知らないけど。
私とかっちゃんを繋ぐのは“どちらが上か”。それを決めるだけの繋がり…だと思ってる。

かっちゃんの姿が控え室に消える。
さて、そろそろ観客席へ戻らないとね。



***



「お。お疲れ名前」

「ただいま」


私の足音で気付いたのか、響香ちゃんが声を掛けてきた。
どこに座ろうか見渡してると、指さして空いてることを伝えてくれた響香ちゃんの厚意を受け取り、座らせて貰う事に。
ちなみに空いている両隣は百ちゃんとお茶子ちゃんらしい。


「で、今は……」

「切島とB組の奴だね。個性だだ被り対決」

「あ、だから殴り合いか……」


響香ちゃんの説明で現在の状況を把握できた。
ぼーっと見ていると両者ダウンで引き分けになった。
引き分けになった場合は、ミッドナイト先生によると腕相撲などの簡単なもので勝敗を決めて貰う事になるらしい。


「あれ、名前ちゃん帰ってきてたんだ。2回戦進出おめでとう」

「いーちゃん!ありがとう〜。そっちこそ、2回戦進出おめでとう〜」


声を掛けられたので横を見ると、そこにはいーちゃんと飯田君がいた。
1つ空けて隣に飯田君が座った。


「次は君とだ。宜しく頼む」

「飯田君なんだ!宜しくね」


次の対戦相手は飯田君だったようだ。
さて、彼はどのような戦闘スタイルなのか。分かるのは足が速い事。
飯田君の速さに対抗でき、かつ場外へ押し出せる子……。


「哲鉄と切島が回復してる間に次の試合を始めるぜェ!!!」


2人が回復している間に次の試合へ。……次の組み合わせは。
後ろからは不安そうな声が聞こえる。
そう。1回戦最後の試合を締めくくるのはかっちゃんとお茶子ちゃんの試合だ。
……マイク先生、私情ダダ漏れですよ。

そして……試合開始の合図が下ろされた。





2021/07/10


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