第1節「再会」
「おめでとう、君には個性が発現してるよ」
意識が浮上した時に、目の前に白衣を着た男性に言われた言葉。
個性、って……どういう意味?
「こ、せい……?」
「うん、個性。どんな個性かまでは分からないけれど、君にも個性あるよ」
私が求めていた答えが返ってこなかった……。
個性って何ですか?……と言える雰囲気ではない。
「良かったわね名前!」
横からそう聞こえた瞬間抱きつかれた感覚。
横を見ると綺麗な女性が私に抱きついていた。
知らないはずなのに、私はこの人の事を『母親』と認識している。
それに、私はこの人の腕の中にすっぽりと嵌まっている。……え?
「?どうしたの?」
不思議そうなお母さんと目が合う。
……私、縮んでない?縮んでるよね!?
「お母さんはどんな個性なんです?」
「私は治癒系の個性です」
「治癒系の個性なんですね!もしかしたらお子さんにも……!」
「旦那の方かも知れませんわ。彼の個性も素敵なので!」
「では旦那さんの個性は?」
「水系統の個性ですよ」
今の状況に驚いている私を置いて医者と話をしているお母さん。
会話内容を聞くに、どうやら治癒系の個性は珍しいそうだ。
で、私のお母さんは治癒系の個性でまだ見ていないお父さんの個性は水系統の個性のようだ。
……いや、そもそも個性って何なの!?
***
お母さんと手を繋ぎながら帰り道を歩く。
やはり、先程までいた場所は病院だったようだ。
しかし、個性の事は未だに分からない。
もしかして、私の知っている“個性”とは違う……?
個性について考えていたその時、
「!?いった……っ!?」
突如痛み出した右腕。
痛みに反応して、お母さんの手を離してしまった。
「名前、どうしたの!?」
「う、腕が……、熱い……っ」
あまりにもの痛みに涙が出てきた。
痛みで閉じていた目を開くと、見覚えのあるものが腕に浮かび上がっていた。
「これは何なの……?」
戸惑っているお母さんの声が上から聞こえる。
お母さんの態度とは対象に、私は嬉しかった。
痛みで出てきた涙が、嬉し涙へと変わる。
「名前、腕が痛いのね?大丈夫よ、私がすぐに治して___」
お母さんの手が私の腕に触れようとした瞬間だった。
「我がマスターに触れるな、雑種」
聞き覚えのある声が聞こえた。
その声は金髪赤目の彼の声によく似ていた。
声の聞こえた方へ振り返ると、そこには頭の中で浮かべていた人物がそこにいた。
「ギル……!」
「……久しいな、名前」
赤い瞳をこちらに向け、今まで見たことの無い表情でこちらを見ている青年……全身金色の鎧を身につけたこの人物は『英雄王 ギルガメッシュ』だ。
嬉しさのあまりギルに向かって飛びついた。……ん?待てよ?
普段お障りも許可を取らないといけないのに、ギルが私を受け止めただと……?
どうしよう、別の意味でも泣きそう。
「二度と我の前から消えることは許さん」
「うん……っ、ごめんね、ダメなマスターでごめんね……!」
私を抱くギルの腕に力が入る。
片腕で抱えられるほどに私は縮んでしまっているのか……。
いや、それよりも通行人の視線がすごい!こっちを二度見してるよ!!
まあそっか……、だって全身金色の男性とその男性に泣きついてる少女の絵は明らかに可笑しいか……。
2021/03/09
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