数日前
とあるバーにて
「そっか。”姫”は連れて帰れなかったんだね」
「弱らせた所までは良かったのですが、オールマイトに邪魔をされてしまい……」
デスクトップ越しから聞こえた声に、靄のかかった人物『黒霧』がそう答えた。
「お姫様強かった……!オールマイトが邪魔さえしてくれなきゃ連れて帰って来れたのに……!!」
楽しそうな口調でそう話したのは『死柄木 弔』という男だ。
「……仕方ない。だけど次は必ず連れて帰って来るんだよ?姫は”こちら側”にいるべき人間なんだから。……あのような場所で放っておくわけにはいなかない」
「分かってるよ先生」
死柄木に『先生』と呼ばれた人物は、先程から会話に出てくる“姫”について会話をしている。
そして、彼らがいう“姫”はこちら側にいるべき存在だと主張した。
「英霊を束ねる姫、苗字名前……。彼女自身の戦闘能力はかなり低いように見えます。攻撃も単純で読みやすい行動ばかりでした」
「そうなのかい?でも英霊はね、1人1人が強力な存在。彼らは姫の”個性”だから、彼女さえ引き込めば英霊もこちらのものさ」
黒霧の言葉に先生と呼ばれた人物はそう答える。
“姫”と呼ばれた人物……苗字名前に宿った個性である『英霊』の力を彼らは欲しているようだ。
「でもね、姫は気付かなくても英霊は鋭いみたいだよ?」
___今、この場にいる可能性もあるんだから……。
そう言った先生と呼ばれた人物は、どうやら英霊について理解しているらしい。
「彼らは普段、霊体化と呼ばれるもので姿を隠している。襲撃されていないのが奇跡だと思ってもいいだろうね」
「英霊って奴、そんなに強いの?」
「1人だけならまだ凌ぐ事ができるかも知れない。ただし、それに伴う犠牲は多いだろうね。……”意思のある個性”、強力な存在が11人いると考えてみて」
「へぇ……!!」
先生と呼ばれた人物の言葉に、分かりやすく嬉しそうに反応する死柄木。
その様子は新しい事を知って喜ぶ子供のよう。
「早く助けてあげなきゃ……、あのゴミだらけの場所から」
そう言って死柄木の口はニヤリと歪んだ。
デスクトップは既に暗闇に染まっており、声は聞こえなくなった。
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2021/07/04
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