第10節「私の個性」
次の日
学校は臨時休校となった。
なので私は、昨日から考えていたお見舞いに行こうと準備をし終えて後は出かけるのみになった。
「出かけるのかマスター」
「あ、エドモン。うん、そうなの。お見舞いに行こうと思って」
「なるほど。ならば俺も行こう」
玄関でエドモンとばったり会い、護衛して貰う事になった。
その場でエドモンは現代社会に溶け込んでも問題無いであろう服装へと替わる。……顔が良い人はなんでも似合うのね。
そして私が持っていた見舞いの品をさりげなく持ってくれた。
これが、イケメンと呼ばれるポイントか……!!
***
「失礼しまーす……あっ、マイク先生」
「おー、女子リスナー!イレイザーの見舞いかい?」
「はい!」
相澤先生が入院している病院へやって来た私。
聞いた病室へ入るとそこにはマイク先生がいた。
「すみません、マイク先生がいるとは思わなくて……。相澤先生のお見舞いの品しかないです」
「大丈夫だリスナー!……ゼリーしか入ってないな」
「だ、だって相澤先生よく飲んでいらっしゃるから……。好きなのかなって……」
渡した袋の中身を見てマイク先生がそう言う。
だって、ゼリー飲んでる所しか見たことないんだもん……!
「ありがたく頂こう」
「えっ!?先生起きて……!?」
「最初から起きてたよ?」
急に相澤先生の声が聞こえて、病院なのに大きな声を出してしまった。
起きてたならそうと言ってくださいよ、マイク先生……。
「後ろに立ってるのは例の英霊って奴か」
「!やっぱり知ってたんですね」
「お前の両親から聞いてたからな」
相澤先生はサーヴァントの事を知っていたみたいだ。
あれ、という事は相澤先生は両親を知ってる……?
「両親を知ってるんですか……?」
「勿論だぜ!俺たちにとっては大先輩だからな!」
「でも、出身校違いますよね……?」
「だからと言って、先輩には変わりないだろォ?」
な、なるほど……。
確かにマイク先生の言う通り、お父さんとお母さんはヒーローという点で言えば先輩だ。相澤先生とマイク先生にとって先輩である事は変わりないだろう。
両親はあの見た目で40代だからなぁ……。どうみても30代前半……、お母さんに関しては20代でもいけると思う。
あれが年齢詐欺って奴か……。あ、年齢詐欺といえばかっちゃんのお母さんも若いな。
……私の中で段々話が脱線していく……。
別の所に飛んでいた考えから逸らし、目の前のことに集中する。
「苗字の両親……アクアさんとサナーレさんが何か言ってなかったか?例えば……、そうだな。もしお前の個性が暴走した時に止められる個性を持つ者がいる、とか」
「!確かに言ってました!!相澤先生の事だったんですね……!」
お父さんが言っていたストッパーになれる個性をもつヒーロー。……その中に相澤先生は間違いなく入っているだろう。
体力テストの時に、いーちゃんに突っ込んでいったかっちゃんを止めようと飛び出したとき、相澤先生の個性にかかって擬態状態が解除されてしまったから。
「ですが相澤先生……。後遺症が残るんでしょう?クラスメートに聞きました」
「あー……。俺の事は心配しなくていい。お前は大丈夫だったのか?」
「見ての通りですよ!リカバリーガール先生の治癒のお陰です!」
「そうか」
身体を動かして平気なことを伝える。
全身に包帯が巻かれているため、先生の表情は見えない。
「しかしお前が狙われた理由が分からんな」
「何か思い当たる事はあるかい?」
「個性だと思います。……英霊の力を使うことができる、この個性を狙ってたんだと思います」
2人にそう聞かれ、昨日自分が推測した事を話す。
「それなら納得はいくな」
「ですが、いーちゃ……緑谷君の推測では敵側は私達の個性を知らなかった可能性があります」
「根拠は?」
「蛙吹さんが水難ゾーンへワープされていた事です。彼女も言ってましたが、生徒の個性を知っていたら蛙吹さんの場合火災ゾーンへ飛ばされていたはずなんです」
「なるほどなァ……」
自分のスキルが効いてない事で悲しそうだったジャックを思い出す。
ジャックが悪いんじゃない。……使うな、と言われていたのに独断で使っていた私が悪いんだ。ジャックが責任を感じる必要はない。
「敵連合と呼ばれていた奴らはまた苗字を狙いにくる可能性が高い。……気をつけろよ」
「はい。ありがとうございます」
相澤先生とマイク先生にお辞儀をして病室を後にする。
近くの椅子に座っていたエドモンがこちらを見て席を立つ。どうやら私が知らないうちに病室を先に出ていたようだ。
「帰るのか」
「うん。……って言いたいんだけど、もう一つ寄りたい所があるんだ」
「付き合おう」
「ありがとう、アヴェンジャー」
私とエドモンは一緒に病院を後にした。
2021/07/04
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