第7節「二人のリスタート」
演習用ビルB
「第2戦!ヒーローチーム、Bコンビ!敵チーム、Iコンビ!」
2戦目は私、透ちゃん、尾白君3人のチームIが敵側。
対するヒーロー側はBチームだ。先程私の真後ろにいた氷君(名前が分からなかった)と、背の高い男の子がいるチームだ。
「さっきのを見て、作戦考えたんだけど……」
「どんなの?聞かせて!!」
2人に考えた策を伝える。
氷君の個性は見たまんま氷の個性だろう。確か、体力テストでも氷を使ってた気がする。
で、背の高い男の子はどんな個性か分からない。体力テストではどこかで「力つよッ!!?」みたいな事を叫ばれてた気がするので、恐らくいーちゃんみたいなパワー系なのかも。
よって、2人は完全な戦闘向きな個性なのでは、と考えが纏まった。
対して私達の方。
尾白君の個性は『尻尾』。シンプルな個性ではあるが、屋内戦では使いようによっては動きやすい個性でもあるだろう。
透ちゃんの個性は見たまんま『透明』の個性。攻撃に向かない代わりに隠密には優れている。
私の個性は屋内に向かない子ばかりなので、戦闘に行くとしたら屋内戦では少々向かない。
「苗字さんが1人で守るの?」
「うん。2人は屋内において動きやすい個性だから、ヒーローチームを捕まえる役になってほしい!」
「でも速さなら名前ちゃんの方が速いと思うなぁ」
「速さだけじゃ勝てないよ。……それに、私の個性じゃ簡単に人を殺せてしまう」
恐らくクラスメートの中で私の個性の認識は素早い動きができるみたいなものだろう。
しかし、個性把握テストで使った小太郎の能力はほとんどあの場で使われていない。
彼の能力をそのまま使えるのなら楽なのだが、間違いなく怪我させてしまう。多少の怪我は想定内なんだろうけど、私の場合は少しでは済まされないから。
「だから守備に徹しようと思って。……危険な事をさせたい訳じゃないんだけど、どうかな」
「分かった!じゃあ私、ちょっと本気出すわ!手袋もブーツも脱ぐわ!」
私の言葉にそう返事した透ちゃんは、目の前で本当に手袋とブーツを脱いだのだ。
……あれ、透ちゃんの個性は透明…つまり透明人間って事なんだろうけど……まさか、今全裸!?
「じゃあ苗字さんの作戦で行こう。何かあったら言ってくれよ」
「よろしくね、名前ちゃん!」
尾白君と透ちゃんが核兵器の張りぼてが設置された部屋から退出した。
……さて、と。
「……セイバー。貴方は出てきちゃダメだよ」
『む。何故だ』
「これは授業、訓練だよ。いくら戦闘訓練だからといって貴方がでてきちゃったらパワーバランスが完全に崩れちゃう。……それに、みんなの事は秘密なんだから」
『それもそうだな!分かったぞ奏者!余は離れた場所で見ている!』
「了解。でも、もしかしたら相手の個性でばれちゃうかも知れないから気をつけて」
『ああ!』
その会話を最後にネロとの会話が切れる。
……さて。守備に向いた子は、っと。
右腕に令呪が浮き上がる。
「借りるよ、貴方の力。擬態、”マーリン”!」
『存分に使ってくれたまえ』
マーリンの声が聞こえたと思った瞬間、彼の魔力が入ってくる。
目を開けると、マーリンの髪の色に変化した自分の髪が視界に入った。
「急にごめんね。貴方の力を借りたくて」
『構わないよマスター。で?何をしたいんだい?』
別に護衛のサーヴァントだけしか擬態できないわけではない。自分の位置から遠くにいるサーヴァントにも擬態は可能だ。ただし、擬態に消費する魔力が少し多くなる。
そういう理由で、いつもは護衛のサーヴァントに擬態していた訳だ。
「この張りぼての核兵器を守りたいんだ。バリアを張ってれば大丈夫かな?」
『それなりに強度はあるよ。使うといい』
マーリンと相談し、バリアを張る事に。
マーリンが使用している杖を取り出し、核を覆うようにバリアを生成する。
「よし、とりあえずはこれで良いかな。あとは向こうがどう出てくるか……」
『私の千里眼を使うといい。君が使う場合と私が使う場合では効果が違うけど』
「屋内においては相性ばっちりだよ……!」
千里眼
マーリンが保有する能力で、“世界を見通す眼”と言われている。
彼に擬態した私に、マーリンはもつ千里眼の能力がそのまま使えるのかというと『NO』だ。
流石にマーリンの千里眼の能力をそのまま使えるわけではなく、千里眼と呼ばれる能力に“相当するもの”が使えるようになるみたいだ。
私がマーリンに擬態することで使えるようになったのは『透視能力』だ。
透視できるのは建物や箱などの無生物のみ。人間や動物のように生きているものを透視することはできない。
「それでは!屋内対人戦闘訓練、第二戦!スタート!!」
オールマイト先生によって、開始の合図が出された。
この15分間、どう守り切ろうか。
2021/07/02
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