第7節「二人のリスタート」



昼休みが終わり、次の授業は……


「私がーっ、普通にドアから来たーッ!!!」


ヒーロー基礎学だ。
このヒーロー基礎学、オールマイト……先生が担当しているらしい。
その事もあってクラスにはオールマイト先生が来たことによるざわめきで満ちている。

ヒーロー基礎学という授業は、様々な訓練を行う実技教科で最も単位が多い教科でもあるようだ。
で、今日の授業内容は___


「戦闘、訓練……!」


まさかこんな早くに個性を使った戦闘訓練ができるとは。なるほど、これが最高峰。
私の前の席であるかっちゃんと、私の後ろの席であるいーちゃんの声が聞こえた。


「そして、そいつに伴ってーっ、こちらッ!!!」


オールマイト先生がリモコンを押した事で、壁から何か出てきた。どうやらあの場所にコスチュームが収納されていたようだ。
コスチュームと言えば……と、少し前の事を思い出す。



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「奏者よ、何を悩んでおるのだ?」

「あ、ネロ。コスチュームだよ、ヒーローが着る奴」

「コスチュームとな!決まったのか?」

「それが良い案が浮かばなくて……」


事前にコスチュームというものがどういう物であるかは両親ふたりに聞いている。
だからこそ悩んでいた。


「個性に合った作りなのが良いんだろうけど…。私、サーヴァントみんなに擬態する個性だから正直コスチュームは凝らなくても良いかなって思ってるの」

「なるほどな。……おっ。なら、カルデアの魔術礼装はどうだ?」

「魔術礼装?……流石にこっちの世界で魔術礼装は作れないよ」

「違う違う! デザインの話だ!」


あ、デザインの話か。
確かにカルデアの魔術礼装はおしゃれだったし、コスチュームのデザインとして採用するのはありだ。


「因みに余は戦闘服を勧める!」

「理由は?」

「奏者の美ボディが際立つからだ!」

「どんな理由!?」



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……というネロの案をそのまま出してしまったのだ。
まあ両親ふたりのコスチュームも身体のラインが出てるものだし……という理由と、あの魔術礼装のデザインを…しかも私の若干うろ覚えであるものを完璧に再現できる訳がないか、と思っていた。

……しかし、私は嘗めていた。
コスチュームを作ってくれている制作会社の人達の技量を。


「は、ははは……」

「どうしたの名前ちゃん」

「いや、あの……。思っていたよりコスチュームの完成度が高くて、つい……」


隣で着替えていた梅雨ちゃんに声を掛けられ、思ってたことを正直に話す。


「ボディスーツなのね。私もよ」

「梅雨ちゃんとお揃いだね」


私のコスチュームは生前使っていた魔術礼装のデザインを元にしている。
だが、私はほとんど覚えていないのでネロに任せっきりだったんだけど……。まあ私が希望した部分以外はほぼあの戦闘服だし、問題ないだろう。

梅雨ちゃんのコスチュームも私と同じボディスーツのようだ。
色は緑色で統一しており、目に優しい色だ。

私は既に着替え終わっていた女子達と一緒にグラウンドβへ向かう。


「そういや自己紹介してなかったよね。ウチは『耳郎 響香』」

「わ、私は苗字名前。よろしくね、響香ちゃん」


一緒のタイミングで更衣室を出た響香ちゃんが自己紹介してくれた。
戸惑いながらもなんとか言えたと思う。


「苗字さん。私は『八百万 百』と申します。宜しくお願いしますわ」

「宜しくね、百ちゃん」


私の3つ後ろである彼女の名前をやっと知る事ができた。
個性把握テストではあのかっちゃんを抜いて一位だった人だ。


「私は『葉隠 透』!宜しくね名前ちゃん!」

「宜しくね、透ちゃん!」


かっちゃんの前の人……透明で何も見えない女の子の名前は透ちゃんというみたい。
……って。つい、梅雨ちゃんみたいに名前で呼んでしまったけど大丈夫だっただろうか。


「〜っ! はいっ、宜しくお願いしますわ!」

「宜しく、名前」

「仲良くしよーね!!」


どうやらそれは杞憂だったみたいだ。
小中学校は男女混合の学校だったので、勿論女の子はいたんだけど幼馴染みの二人と一緒にいることが多かったから、ただのクラスメートっという認識しかなかった。


「デク君の幼馴染みなんだよね!私、『麗日 お茶子』!宜しくねっ名前ちゃん!」

「う、うんっ。宜しく……っ」


ダメだ、どうしても態度に出てしまった。
いーちゃんと一緒にいる彼女に変な気持ちを抱いてしまっている。

この感情はなんだろうか。
初めての感情に戸惑うしかなかった。





2021/07/02


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