第5節「入試」



最近のいーちゃんはどこか変だ。



「ごめん名前ちゃん、僕これから用事があって……っ」

「何かあるの?」

「え!?えっと、その……。そ、そう!!習い事!習い事があるから、しばらくは一緒に帰れないんだ!!」



その言葉が始まりだった。
ここ最近ずっと一緒に下校していない。

あの事件の後から、いーちゃんの表情は清々しいものになっていた。



「……雄英にむけて、頑張ってるのかな」



なんとなく分かる。
いーちゃんは習い事だと言っていたけど、きっと雄英に向けて頑張っているんだ。
偶に授業中に寝ていることもあるけど、あまり疲れが取れてないのかな。

上手い事は言えないけれど、邪魔にならない程度に彼を支えよう。
そう思いながら私は近づいて来た試験日を浮べる。



「私も負けてられないな」



さて、今日もマーリンに指導して貰わなくては。
そう思いながら家路を歩いた。



***



月日は流れ、あっという間に推薦入試当日になった。
どうやらヒーロー科の試験科目には個性を使った実技試験があるようだ。
試験内容を頭にいれ、呼ばれるのを待つ。



「受験番号XXXXX」

「はい」



自分の番号が呼ばれる。
返事をして、指定された場所に立つ。



「では、試験始め」



その言葉と同時に右腕に令呪が浮き上がる。



「擬態___」



いーちゃん、かっちゃん
私は先に行くよ
守れる力が欲しいから、誰も失いたくないから

目の前にある試験内容に向かって個性をぶつける。
静まり返った空間に周りの試験官が声を漏らす。



「試験終了。次、受験番号…」



目の前に見えた光景から背を向け、会場を後にする。
実技試験が終われば受ける試験は全て終わったので、このまま士傑高校を後にする。



「……中々派手にやったな」

「マーリンの指導のお陰だよ」

「フッ、そうか」



今日の護衛だったエドモンと友に帰路を歩く。
さて、結果はどれほどかな?





2021/04/29


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