第4節「神野区の悪夢」
side.飯田 天哉
「ここが発信機の示す場所ですわ」
「これがアジト……いかにもだな!」
八百万君に案内されながら着いた敵のアジトは、周りに溶け込むようにそこに存在していた。
普通に見ていれば気にはならないような建物。……ここに爆豪君や苗字君が。
「わかりません……ただ、私が確認した限り敵は丸一日ここから動いていません。敵がいるからと言って苗字さんと爆豪さんがいるとは限りません。私達が今どれだけか細い情報でここに立っているか、冷静に考えてみて下さい」
「この中には耳郎君や葉隠君のような、スニーク活動に秀でた者はいない。少しでも危険だと判断したらすぎ止めるぞ。……共であるからこそ、警察への通報も辞さんからな……!」
「……ありがとう、飯田君」
できる範囲で出来ること……考えよう。
「前提条件は僕らが個性を使わず、且つ敵との戦闘を避けること。その上……」
「久々に見るな、ブツブツ」
「緑谷さんって感じですわ」
そう。
君は一度決めてしまえば止まらない……止まれない!そんなところを友として、ライバルとして、尊敬しているんだ。
だが、これ以上は譲れない。___今度は俺が、守るんだ。
***
side.緑谷 出久
少し近付いてみたものの、特に何も起こらない。
切島君の言うとおり、この建物は電気も付いていないし人気がない。
ドア付近は雑草が茂っており、人が使っていないようにも見える。しかし、この超常社会だ。そのように装う事だってできる。
どちらにせよ、迂闊に中に入るなんて無謀な事はできない。
「どうにかして中の様子を確認しないと……」
「お〜い!何してんだよホステス〜!俺達と飲みましょ!」
「やーめとけ、バカ!」
後ろから話しかけられたのは一般市民の男性二人。
顔の赤さと様子からに酔っ払っているんだろう。
「一旦離れよう」
轟君の指示に僕達は一度、少し離れた別の場所に移動した。
うーん、多くは無いけれど人通りはある。
「目立つ動きはできませんわよ。……どうされますの?」
「………!」
どうにかして中の様子を見れないものか。
建物の周辺を見ていると、狭いが人が通れそうな道を発見した。
「裏に回ってみよう。どれだけか細くても、僕等にはここしか情報がない」
僕の提案にみんなが頷く。
……ここで何も出来ずに帰るなんて事、できない!
2023/12/04
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