第3節「林間合宿 後編」
side.轟 焦凍
「ちくしょう、速え!あの仮面……!」
「飯田君がいれば……っ」
仮面の敵を追いかけるも、自分で言っていた通り逃げ足が速え。
このままじゃ離される一方だ!
「くそ……!」
「諦めちゃ…ダメだ……!!追いついて……取り返さなきゃ!」
「しかし、このままでは離される一方だぞっ」
「麗日さん!!僕らを浮かして、早く!そして、浮いた僕らを蛙吹さんの舌で思いっきり投げて!障子君は腕で軌道を修正しつつ、僕らを牽引して!麗日さんは見えてる範囲でいいから、奴との距離を見計らって解除して!」
「成程、人間弾か」
この状況を打開できる可能性を、こんな短時間で思い着くとは……!
「待ってよデク君、その怪我でまだ動くの……!?」
麗日の言う通り、こいつはもう気を失っててもおかしくねえハズだぞ……。
「緑谷、おまえは残ってろ。痛みでそれどころじゃあ……」
「痛みなんか今は知らない。動けるよ……早くっ!!」
なのに、仲間が奪われて……それも、幼馴染二人が狙われて奪われて……。今のこいつは取り返す事で頭がいっぱいなんだ。
「……!デク君、せめてこれを!」
麗日は自身の来ていた上着を使って、ぐちゃぐちゃになっている腕を固定した。……こいつは何を言っても聞かねぇ。自分の手で助けようとするんだ。
「……いいよ、梅雨ちゃん」
「必ず三人を助けてね」
蛙吹の舌が俺達に巻き付く。そして、思いっきり投げ飛ばされた。……これは思っていたより速え!
「!?」
追いついた!
こちらに気付いて敵が振り返ったが、遅え!
「うわあああああッ!!?」
「3人を返せ!!!」
敵の背中に衝突。……捕まえた!
しかし、周りには仲間と思われる敵が。その中には蛙吹と麗日が戦闘していた女の敵の姿が。
「知ってるぜ、このガキ共!!……誰だ!?」
くそ……!この仮面だけだったなら、まだ楽だったってのに……!!
「ミスター、避けろ」
「……っ、ラジャー」
敵の身体が光ったと思えば、正面から青い炎がこちらに向かって来ていた。
俺は咄嗟に躱したが、緑谷と障子に直撃。二人の悲鳴が聞こえた。
「緑谷、障子!!……!」
「死柄木の殺せリストにあった顔だ! そこの地味ボロ君とお前! なかったけどな!!」
躱した正面には黒を基調とした服を纏っている敵が。
氷で攻撃を仕掛けるも、咄嗟に所で躱された。
「やるな!楽勝だぜ!かかってこいよ!いい加減にしろって!!」
「……ッ、何なんだこいつ」
巫山戯ているようにしか見えねぇのに、全く攻撃が当たんねぇ!
「緑谷、轟!逃げるぞ!!」
「!?」
「今の行為ではっきりした!個性は分からんが、さっきお前が散々見せびらかした右ポケットに入ってたこれが…常闇、爆豪、そして苗字だな、エンターテイナー!」
「障子君!!」
どうやら仮面の敵と衝突した際、隙を見て取り返していたらしい!
「ほほ〜あの短時間で良く!流石六本腕!勝り上手め!」
「よし、でかした障子!」
後はここを抜けて撤退するだけだ!!森に入れば相手の目を欺けやすい!
一目散に森へと走って行ったが……
「! 脳無!!」
目の前には別の敵が。
……くそ、タイミングがわりぃ!!
「こっちだ!!……!?」
「こ、こいつは……」
「USJにいた……」
「ワープの……!」
迂回しようとしたが、正面に現れたのはワープの敵。
ということは此奴ら全員、敵連合か!
「待て。まだ目標が」
「ああ、アレはどうやら走り出すほど嬉しかったみたいなんでプレゼントしよう」
プレゼント?
諦めるってことなのか?
「癖だよ、マジックの基本でね。モノを見せびらかす時ってのは___見せたくないモノがある時だぜ」
「まさか……!!」
仮面の敵の素顔が現れた、と思えば舌の上には3つの玉が。
指を鳴らしたと思えば、障子の手にあった玉から俺の氷が。……くそ!!
「右手に持ってたもんが右ポケットに入ってんの発見したら、そりゃあ嬉しくて走りだすさ」
「待てえええええ!!!!」
このままじゃ持ってかれる……!!
「そんじゃ、お後がよろしいようで。……ぐはァ!?」
刹那、仮面の敵に見覚えのあるビームが直撃した。
2023/9/16
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