第3節「林間合宿 後編」


side.轟 焦凍



「麗日!?」

「障子ちゃん!みんな!!」



名前と爆豪を護衛しつつ施設に向かっていた時、ヴィランと戦闘中の麗日と蛙吹と遭遇した。
ヴィランは人数が増えたからなのか、向こうから戦闘を離脱した。


「なんだ、今の女」

ヴィランよ。クレイジーよ」

「麗日さん怪我を……!」

「大丈夫、全然歩けるし。っていうかデク君の方が!」

「立ち止まっている場合か!早く行こう」

「とりあえず無事で良かった。……そうだ!一緒に来て!僕ら今、かっちゃんと名前ちゃんの護衛をしつつ施設に向かっているんだ!」

「……ケロ? 名前ちゃんと爆豪ちゃんを護衛?その二人はどこにいるの?」


蛙吹の言葉に背筋が凍っていく感覚がした。
後ろを振り返ると、そこには爆豪と爆豪に抱えられていた名前もいなかった。
視界には進んできた道しか映っていなかった。



「二人なら……俺のマジックで貰っちゃったよ?」



声のした方向へ首を動かすと、そこには仮面を被ったヴィランがいた。


「こいつぁはヒーロー側にいるべき人材じゃあねえ。もっと輝ける舞台へ俺たちが連れてくよ」

「ッ!? 返せ!!」

「返せ?妙な話だぜ。姫と爆豪くんは誰のモノでもねぇ。彼は彼自身のモノ、彼女は彼女自身のモノだぞぉ?エゴイストめ!!」

「返せよ!!」

「どけッ!」


氷をヴィランの元へと生成するも、躱されてしまった。


「我々はただ、凝り固まってしまった価値観に対し『それだけじゃないよ』と道を示したいだけだ。今の子らは価値観に道を選ばされている」

「……! 爆豪と名前だけじゃない、常闇もいないぞ!」


後ろ3人を音も無くさらったっていうのか……!
一体どういう個性だ……!?


「わざわざ話しかけてくるたァ……舐めてんな」

「元々エンターテイナーでね、悪い癖さ。常闇君はアドリブで貰っちゃったよ」


奴の手元にある青い玉が2つから3つに増える。……あれが爆豪と名前、常闇で間違いねェ!


「ムーンフィッシュ…『歯刃』の男な。彼はアレでも死刑判決控訴棄却されるような生粋の殺人鬼だ。それをああも一方的に蹂躙す暴力性……彼も良いと判断した!」

「この野郎!!貰うなよ!」

「緑谷、落ち着けっ」

「麗日、こいつ頼む!」

「え。あ、うん!」


俺の大氷結で……!!
ヴィランの元へと最大火力の氷結を展開する。
……手応えがねェ。まさか、躱された?


「悪いね〜、俺ァ逃げ足と欺くことだけが取り柄でよ!ヒーロー候補生なんかと戦ってたまるか」


ヴィランは自分の耳に手を当て、誰かと話し始めた。


「開闢行動隊!目標回収達成だ!同時に姫の回収にも成功!短い間だったがこれにて幕引き!!予定通りこの通信後5分以内に“回収地点”へ迎え!」


___と。


「幕引き…だと?」

「ダメだ!!」

「させねえ!!絶対逃がすな!!」


絶対に三人を取り返す……!!
このまま逃がしてしまえば、取り返しの付かない事になっちまう!!!





2023/9/16


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