第2節「林間合宿 前編」



「キャリアは今年で12年にもな…ふぎゃッ!!?」

「心は18!!!!!」


呆然。
プッシーキャッツについて説明していたいーちゃんの顔を掴んだのは水色のコスチュームを着用している方…『ピクシーボブ』さんだ。


「……心は?」

「18!!!」


……えっとー、これはどういう事なのかな?
カルナに聞けばもしかしたら分かるかもしれない。

貧者の見識
カルナのもつスキルの一つで、相手の本質を見抜く能力だ。
簡単に言うと、嘘などをついてもカルナには通用しないって訳だ。

先程いーちゃんかキャリアは今年で12年と行ってたので、18歳からヒーローになれる事を考えると……相澤先生と歳が近いはず。
嘘をついているのは間違いないので、カルナに聞くまでもないだろう。聞いたら聞いたで収集着かなくなるのは目に見えている。
それに、これ以上聞いてはいけない気がする。


「お前等!挨拶をしろ」

「「「よろしくお願いしますッ!!!」」」



***



「ここら一帯は私等の所有地なんだけどね、あんたらの宿泊施設はあの山の麓ね」

「「「とおっ!!?」」」

「あれ?じゃあなんでこんな半端な所に?」


赤色のコスチュームを着用している方…『マンダレイ』さんはどう見ても山しかない場所を指指し、自分たちの所有地だと説明する。
……あれ、何故今そのことを説明した?


「これってもしかして……」

「いやいや……」

「あっはは……バス、戻ろうか。な?早く」

「そうだな……そうすっか」


クラスメイト達が何かを察し始め、バスに戻ろうと言い出す。


「今は午前9時30分。早ければ……12時前後かしら?」

「ダメだ……!おい!」

「戻ろうっ!!」

「バスに戻れーッ!!早くうぅッ!!」

「12時半までかかったキティはお昼抜きね〜♪」


みんなにつられるように私もバスに向かって走り出す。



「悪いね諸君。___合宿は“もう”始まってる」



相澤先生の声が聞こえた瞬間、私達の前を遮るようにピクシーボブさんが現れる。
そして地面が盛り上がった。
足場がなくなり、身体が宙に浮く。


「マスター!」

「カルナっ!」


土に被りそうになった瞬間、カルナが土から守よう私を抱きしめる。
そのまま横抱きにされ崖の下を落下する。
着地したカルナは瞬時に武装化し、上から降ってきた土を焼き払った。

……あれ、個性の使用許可出てないよね?
やばい……バレてませんように……。


「おーい!私有地につき、個性の使用は自由だよー!今から3時間、自分の足で施設までおいでませ!この___『魔獣の森』を抜けて!!」


マンダレイさんが上からこちらに声を掛ける。
ま、魔獣の森?


「魔獣の森!?」

「なんだそのドラ○エめいた名称は!?」

「雄英こういうの多過ぎだろ……!」

「文句言ってもしゃーねーよ。いくっきゃねェ!」


魔力反応は感じない。
カルナにも確認をとってもらったけど、やはり魔力反応はないようだ。
じゃあ上鳴君がドラ何某みたいな名前だって言ってた様に、ただそういう名前を付けてるだけだろう。

私はクラスメイトより少し離れた場所に着地していた。いや、正確にはカルナが抱えてくれてるから私自身が着地した訳ではない。
恐らくカルナが土を躱そうとした結果なのだろう。最後燃やしてたけど。


「「ま、魔獣だーッ!!?」」


上鳴君と瀬呂君の叫び声に振り返る。
そこには確かに魔獣と言えそうな形の生物が。
しかもその魔獣の近くには峰田君が!!


「静まりなさい、獣よ!!下がるのですッ!!」


口田君が個性で魔獣を静めようとするも、全く聞いてる様子がない。
魔獣が峰田君に向けて前足を振り下ろそうとした瞬間、緑色の閃光が峰田君を救出した。
その人物はいーちゃんである。


「良かった……」


危機一髪って所か。
しかし口田君の個性『生き物ボイス』が聞かないと言うのはどういう事だ?
確か人間を除く生き物ならば彼の命令に従うはず……。


「!マスター、あれは土塊だ」

「土塊?」

「ああ。生き物でも何でもない、ただの土だ」


だから口田君の個性が通用しなかったのか……!
確かによく見れば色は土一色。
魔獣をよく見ようと視線を懲らせていると、三人の陰が魔獣に向かって行く。
その三つの陰は…かっちゃん、飯田君、焦凍君だ。
魔獣はかっちゃん、飯田君、焦凍君。そしていーちゃんの四人によって破壊された。


「あの魔獣を瞬殺かよ!」

「やったな!」

「流石だな〜!爆豪!」

「……まだだ!」


かっちゃんが切島君にそう声を返していた時だ。
自分の横から重々しい足音が聞こえたのは。


「……!」


一体だけじゃなかったのか……!?
しまった、反応に遅れ……っ


「っ!!」


大きな破壊音。
そしてやってくる風圧と爆発音。


「……こんなものか」


私の前にゆっくりと下りてきたのはカルナだった。
まさかあれを一発で倒してしまうとは。……流石だね、大英雄。





2022/2/17


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