第12節「期末テスト」
「……っ、やっぱりか」
ゲートに向かって走る二人の隣に瞬時に現れたのは、勿論オールマイト先生だ。
初めのヒーロー基礎学で見せたあの篭手の火力を受け、ハンデがあった上で追いついたのだ。……かなりの距離が空いていたのに、だ。
かっちゃんが篭手を構えるが破壊され、いーちゃんが持つ片割れの篭手も破壊する。
完全に先手を取られた。
あれだけの攻撃を受けても尚オールマイト先生は平気そうだ。
どちらが優勢かといえば、手数が減っているいーちゃん達よりオールマイト先生の方だろう。
「ひぃ〜〜〜っ!」
「ケロ……っ」
かっちゃんは蹴り飛ばされビルに衝突。
完全に怯んでしまったいーちゃんの腕を掴み、オールマイト先生は戻ってきたかっちゃんに向けてぶつけた。
これには私含め、見ている人達から言葉が消えた。
誰もがその光景に密かに諦めを感じていた時だった。
「爆発!?」
こちらからは音声が聞こえないため、映像を見ることでしか現状を把握する事しかできない。
突如の爆発。間違いなくかっちゃんの仕業だ。
かなりの威力。これ、体育祭の時に見せた爆発に近い威力じゃない……?
「あっ!デク君が出てきた!」
お茶子ちゃんが指を指した方向へ視線を向けると複数あるウィンドウに映る映像に、黒煙からいーちゃんが飛んできたのだ。
恐らくだがかっちゃんがいーちゃんを投げ飛ばしたのだろう。
ゲートまで一直線!…かと思われたが。
「ひいいぃぃ?!」
「……」
どうやら先程の爆破で吹き飛ばされたオールマイト先生が、いーちゃんに向かってヒップアタック。
あの威力だ。腰を押さえながらゲートへとゆっくり歩くいーちゃんを見ると、かなりの激痛なのだろう。
隣にいるマーリンが顔を青ざめながら身体を震わせている。……これはお茶子ちゃんの時より震えてるな。こればかりは共感するよ、うん。
しかしかっちゃんは先程から特大火力の爆破を何度も放っている。
これではかっちゃんが持たない。
確かに勝つにはその手段しかないかもしれない。……けれど、見ていられない……っ!
「あ……っ!」
ついにかっちゃんはオールマイト先生に捕まり、動けなくなった。
次に狙われるのは___いーちゃん!
「……!!」
そう思っていた時だった。
いーちゃんがオールマイト先生を殴ったのは。
突然の事だったからか、オールマイト先生はかっちゃんを抱えるいーちゃんを追うことはなかった。
……アナウンスが流れる。
試験クリアだ!
「少しでも」
少しでも、2人の仲が元に戻りますように。
そう心の中で願うのはいいよね?
だって口に出して言ったら2人とも微妙な顔をしそうだし。
2人は怪我が酷いとのことなので、保健室に直行らしい。
……オールマイトという強敵に勝った。
例えハンデがあったとしても、それは自信になる。
まあかっちゃんはハンデ無しのオールマイト先生と戦って勝ちたいと思ってるかもしれないけど。
でも勝ったととう事は事実だ。
これからの自信に繋げてほしいな。
***
期末試験・演習試験は4人の不合格者を出して幕を閉じた。
不合格
それが何を指すのかと言うと……。
「みんなぁ……合宿の土産話……、楽しみにっしてる……から……っ」
「まだわかんないよ?!どんでん返しがあるかもしれないよ!?」
「そ、そうそう!『実はどっきりでしたー!』とか、あるかもよ!?」
「よせ緑谷、苗字……。それ口にしたらなくなるパターンだ」
次の日
今私といーちゃん、瀬呂君の前にいる四人…三奈ちゃん、上鳴君、切島君、砂藤君は合宿に行けない事を確信しているようで、教室の空気が変わるほどに酷く落ち込んでいた。
泣きついてきた三奈ちゃんをなだめながら、上鳴君に目を刺されて叫んでいるいーちゃんを苦笑いで見つめる。
「予鈴が鳴ったら席に着け!」
教室の扉が開き相澤先生が現れた。
席についてなかった私含む数名はものすごい速度で席に着く。
「おはよう。今回の期末試験だが、残念ながら赤点が出た」
自分の席から見える試験不合格者三名の表情をちらっと盗み見る。
三奈ちゃんは悔しそうな表情を、切島君は落ち込んだ表情、上鳴君は何かを悟ったような表情をしている。
砂藤君は私より後ろの席なので見えないので分からないが、多分諦めの表情を浮べているのは間違いないだろう。
「従って林間合宿は___全員行きます!」
「「「「どんでん返しだーーーッ!!」」」」
三奈ちゃん達の喜びの叫びが教室に響く。
……相澤先生の表情、可愛い。あ、本人には内緒ね?
「行っていいんスか俺等!?」
「ほんとにっ?!」
「ああ。赤点者だが筆記の方は0、実技で切島、上鳴、芦戸、砂藤。あと瀬呂が赤点だ」
隣の瀬呂君が「やっぱり……」と言い額に手を当て落ち込んでいる。
私は峰田君と瀬呂君の試験を見ていないため、結果を知ったのは今日だったのだ。
ま、まあでも林間合宿には行けるし……ね?
今回の試験では、先生達は私達が勝てるようにと、本気ではなかったようだ。
「本気で叩き潰すっておっしゃったのは……?」
「追い込む為さ。そもそも林間合宿は強化合宿だ、赤点取った奴ほど力を付けて貰わなきゃならん。……合理的虚偽って奴さ!」
「「「「合理的虚偽いいぃぃ〜〜?!」」」」
奥で赤点組が喜んでいる……。相当嬉しかったんだろうなぁ……。
まあそれは私だって同じだ。だって行くなら全員で行きたいもんね!
……あと、やっぱり先生の笑顔可愛い。
第12節「期末テスト」 END
2022/2/16
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