第8節「ステインの思想」



「ん?その通り、僕はアクアだよ!」

「わあ〜っ!感激だ〜!まさかこんな所で会えるなんて!」

「君がいーちゃんでしょ?娘がお世話になってるね!」

「へ?」


あ、これはバレたな。
だって彼の事をいーちゃんって呼ぶの私だけだもん。
いーちゃんの首がギギギッとロボットの様に動きこちらを見る。


「名前ちゃん、もしかして……」

「名前?……ああああっ、名前ー!!!!」

「ギャーッ!?エド……ッアヴェンジャー逃げて!全力で逃げて!!」


いーちゃんがこちらを見ると、当然会話していた人物もこちらを見たわけで。
その人物は私を捉えた瞬間、こちらへ全力ダッシュしてきた。
エドモンに逃げるように言うが首を傾げて不思議そうな表情を浮べている。
「何故逃げる必要がある」と言いたげに視線を向けられ、頼れないと判断しエドモンの腕から下りようとした瞬間、捕まった。


「怪我したのかい!?どこ!?お父さんに見せなさい!!」

「お、落ち着いてお父さん……。見られてるから!?」


お願いだから叫ばせないで欲しい。
その度にお腹が痛むから……!





***




「……正解はこの方です」

「正解は僕! 名前の実の父親アクアだよ!」


今やっているのは、駅で別れる前にやっていた『私の親であるヒーローは誰かクイズ』(勝手に始めたのはいーちゃん)の答え合わせだ。
しかしいーちゃんはアクア…お父さんに夢中で私の声は届いていない。


「水を自在に操る個性で、水に関することなら何でも出来るスペシャリストと言っても過言じゃなくて、物理攻撃は効かないし姿を水のように透明にできるから隠密性にも優れている……!消火作業に関してはアクア一人いればなんとかなってしまうし、それだけに囚われず様々な事に……」

「聞いてはいたけど本当に詳しいんだね〜。それに僕の個性よく調べている。うん!感心感心!」


いーちゃんはアクアについて語りだし、お父さんはそれを褒める……。
段々頭が痛くなってきた。


「……はっ!と言う事は、名前ちゃんのお母さんはヒーリングヒーロー『サナーレ』って事!?」


急に向けられた視線に黙って頷く。
そうだよね……アクアとサナーレが夫婦であることは周知の事実だもの。必然的に母親はサナーレであるとバレるわけで。


「救急車、早く来ないかなぁ……」


もうどうとでもなれ。
……エドモンによると、この時の私の目は死んでいたらしい。



第8節「ステインの思想 END





2022/2/4


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