第5節「轟焦凍」



「じゃあ俺も!剛健ヒーロー『烈怒頼雄斗レッドライオット』!!」


梅雨ちゃんの次に発表したのは切島君だ。
……当て字?
失礼だがそう思ってしまった。



「これはアレね!漢気ヒーロー『紅頼雄斗クリムゾンライオット』のリスペクトね!」

「そうッス!大分古いけど、俺の目指すヒーロー像はクリムゾンそのものなんッス!!」



どうやら切島君のヒーロー名は、ミッドナイト先生が口にした紅頼雄斗クリムゾンライオットというプロヒーローの名を真似たものらしい。
なるほど……憧れのヒーローの名から、か。



「ふふっ。憧れの名を背負うからには、それなりの重圧が着いて回るわよ?」

「覚悟の上ッス!」



切島君かっこいい……!
じゃあ私も両親ふたりから名を貰おうかな?
お父さんのヒーロー名『アクア』と、お母さんのヒーロー名『サナーレ』……。うーん、どう取ろう?

……いや、やめておこう。
私は世間では両親ふたりの子供だと公表されていない。
先程ミッドナイト先生が口にした通り、憧れの名を背負うと言う事は様々な事を背負う事。
前に両親が言っていたが、ヒーローは人気商売な所があるらしい。だから、ヒーロー名で何かと察してしまう人が出てくる可能性がないとは言い切れない。



『マスター、まだ決まらないのかい?』

「うん……。全く思いつかない……」



聞こえてきたアーサーの声に、声を抑えながらそう答える。教室が静かだから、一人で喋ってたら変な目で見られるのは目に見えてる。
腕を枕にしてうつ伏せになるが、そんな事をやっていてもヒーロー名は降りてこない。当たり前だ。



「耳郎!!お前ふざけんなよ!!」


上鳴君の声が聞こえ顔を上げると、教卓の前に響香ちゃんが立っていた。
どうやら次に発表するのは彼女らしい。



「ヒアヒーロー『イヤホン=ジャック』」

「良いわね!」


響香ちゃんの考案したヒーロー名は、先程相澤先生が言っていた”名は体を表す”そのものだ。
個性で名を考える、か……。

親しみ、憧れ、個性……。ダメだ、全く思いつかない。
メモした内容を浮べても何にも思いつかず、私は再びうつ伏せになるのだった。



触手ヒーロー『テンタコル』

テーピンヒーロー『セロファン』

武闘ヒーロー『テイルマン』

甘味ヒーロー『シュガーマン』

『Pinky』

スタンガンヒーロー『チャージズマ』

ステルスヒーロー『インビジブルガール』



私がうつ伏せになっている間にも、みんなヒーロー名を発表していく。



「みんなセンスあるなぁ……羨ましい……」

「苗字、真っ白じゃん」

「うん……全く思いつかなくて……」



机の上に置いてあるボードをのぞき見してきた瀬呂君の言葉にガクッと項垂れる。
これ、今日までに決まらなかったらどうなるんだろ……。居残りとかかなぁ……。



「この名に恥じぬ行いを。万物ヒーロー『クリエティ』」



百ちゃんも、響香ちゃんと同じ名は体を表すタイプのヒーロー名か。
クリエイティブから来てるのかな?と思っていたらミッドナイト先生がクリエイティブって言った。



「『ショート』」

「名前……!?良いの?」

「ああ」



百ちゃんの次に発表したのは轟君だ。
が、彼のヒーロー名はまさかの下の名前だった。まぁ、本人が良いなら何も言えないよね。

この後も様々なヒーロー名が出てきた。
で、お次はこの方。



「『爆殺王』」

「そういうの止めた方が良いわね」

「何でだよ!!」



私の幼馴染みの一人であるかっちゃんだ。
ミッドナイト先生の冷めた反応に思いっきり吹き出してしまった。
切島君のお陰で私の吹き出した声は聞こえていないようだ。ありがとう、切島君。



『そろそろ笑っていられないんじゃないかい、マスター』

「うぅ、分かってるよぉ……」



アーサーの言葉で一気に現実に戻された。
本日3回目の机の上でうつ伏せ状態になる。

名は体を表す
……そういえば名前という名、偶然にも前世の私と同じだ。
そう思った瞬間、身体に何かが走るような衝撃を感じた。



___前世で名前という名前をくれたのは誰?

……ロマニ・アーキマン
ドクターロマニ



___ドクターはどんな人物だった?

……『人間になりたい』と願った、とあるサーヴァントが聖杯に願ったことで生まれた人間



あの人は長い間知らなかったカルデアの召喚英霊第1号のサーヴァントだった。その召喚に使われたのは……



「……『守護英霊召喚システム・フェイト』」



気付けば私は無意識にそう声を出していた。





2021/07/25


prev next

戻る














×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -