第3節「雄英体育祭:後編」
「おっ、爆豪!なんか大変だったな、悪人面〜」
瀬呂君の声に反応し、後ろを振り向く。
向こうも気付いたようだが特に反応無し。
「まあしかし、か弱い女の子によくあんな思い切りの爆破ができるな。俺はもうつい遠慮しちゃって〜」
「思いっきり吹き飛ばされてたじゃない、上鳴ちゃん」
「つ、梅雨ちゃん……」
「ごめん上鳴君、思ったより力入っちゃって……」
「い、いやっ!!大丈夫!!大丈夫だから!!!」
ギルに魔力を分けて貰い挑んだ1回戦。
いつも通りにやったら威力が思った以上に高かった。その原因はギルの魔力によるものだったらしい。流石、英雄王様(?)
「まあそのお詫びと、試合前に緊張解いてくれたお礼のお出かけ付き合うから!」
「え!!マジ!!」
この通り!!と顔の前に両手を合わせる。
「じゃあいつにする?俺放課後でもぐへッ!?」
「聞いてねェぞおい」
「別にかっちゃんに報告しなくても良いじゃない」
とてつもなく眉間に皺が寄ってるかっちゃんにそう言う。
あと上鳴君痛がってるから止めてあげなさい。
「1回戦第7試合で引き分けだった切島と哲鉄の、2回戦進出を懸けた腕相撲の結果はー!!?」
いつの間にか先程引き分けだった切島君とB組の子の対決をやってたらしい。
腕相撲の結果は……?
「勝者切島君、2回戦進出!」
「切符を勝ち取ったのは切島だー!!」
何あの腕相撲……。
私、絶対に秒で負ける……。
この腕相撲が終わった次は2回戦が始まる。
「2人、まだ始まっとらん?」
その声が聞こえた方へ首を動かす。
そこにいたのはお茶子ちゃんだったんだけど、目が凄い事に……。
きっと隠れて泣いてたんだろう。……すごく悔しかったに違いない。
「お茶子ちゃん、お疲れ様。見てたよ試合」
「あはは……。見ての通りの結果やったけど……」
ううん、そんな事ない。
「私、お茶子ちゃんの試合見て元気貰えたよ。ありがとう」
「て、照れるなぁ〜……」
飯田君を挟んでお茶子ちゃんと会話していると、試合の準備が終わったようだ。
2回戦の初めを飾るのは……
「1回戦の圧勝で、観客を文字通り凍り付かせた男!ヒーロー科、轟焦凍!!さて、こっちはヒヤヒヤの1回戦突破!今度はどんな戦いを見せてくれるのか!?ヒーロー科、緑谷出久!!」
いーちゃんと轟君の2人だ。
これが終わったら私は飯田君との試合になる。
「スタァーット!!!」
2人の試合が開始された。
轟君は開始早々氷をいーちゃんに向かって生成していく。
が、それをいーちゃんは指を弾いた事で巻き起こった爆風で氷を破壊させた。
「うぉーッ!緑谷、轟の攻撃を破ったーッ!!」
いつ見てもいーちゃんの個性『超パワー』は凄い。
……だけど、それに伴うダメージが大きいのは難点だ。ある意味私と同じかも知れない。
「げっ、始まってんじゃん!」
声がしたので振り返ると、そこには先程腕相撲に勝利した切島君がいた。
どうやらかっちゃんの次の相手は切島君になるらしい。……相変わらずかっちゃんの言葉遣いは酷いけど。普通言わないよ?ぶっ殺すとか。
まあ切島君は爽やかに受け止めてたけど。……何だか、かっちゃんと切島君って案外いいコンビなのかも知れない。
さっきからいーちゃんは轟君が作り出した氷を超パワーで壊してるだけだ。
はっきり言って不利なのはいーちゃんの方だ。
しかし轟君の戦法はよく分からない。一度ヒーロー基礎学で相手になったけど、そんな長く戦えていない。
彼の戦法を理解したか、と聞かれれば答えるのは「NO」だ。
「個性だって身体機能。奴らにだって、何らかの”限度”があるはずだろ」
「考えりゃそりゃそうか……。じゃあ緑谷は瞬殺マンの轟に長期戦を……」
かっちゃんの言う通り、個性と言うものは身体機能。必ず限界がある。
私なら、それはこの個性を発動する動力源の魔力が切れる。それが限度だ。
ではいーちゃんと轟君は?
いーちゃんは今まで見た様に、肉体のダメージがその限度だろう。
しかし轟君の限度はどんなものだろうか。
「っ!?」
先程とは桁の違う爆風が発生した。
晴れたフィールドには、左腕がほとんど腫上がったいーちゃんと、吹き飛ばされないように氷を背にして留まった轟君がいた。
あの爆風は、腕を振るった事で発生したと言うのか。……受けたら一溜まりもない。よく留まれたな、轟君。
止めを刺す、と言いたげに巨大な氷をいーちゃんに向ける轟君。
しかしそれすらも……
「……!!」
いーちゃんは破壊した。
しかも、既に腫れてしまっている指で。
「全力でかかって来いッ!!!」
静まり返る会場
何処か怒りを含んだいーちゃんの大きな声が耳に入った。
2021/07/10
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