爆豪くんの隣の彼女 | ナノ


▽ バレンタインの彼


「心!!」
「嫌だよ」

A組の教室で私は勝己くんは向かい合っていた。勝己くんの目がおそろしく釣り上がっているのが見えたが私は一歩も引くつもりはなかった。

「心のチョコは俺だけのもんだろうが」
「本命は勝己くんだけ。他の人たちは義理だよ」
「でもお前の手作りなんだろうが」

私が手にしている、A組の人たちへのチョコを爆破しようと勝己くんはじりじり近づいてくる。私はそれを守るように背に隠す。

「みんなで作ったから、私だけの手作りじゃないよ」
「うっせぇ、さっさとそれ渡せ」

手の中で爆破をさせ、威嚇してくる勝己くんに私も負けじと睨み返す。その目に勝己くんは一瞬たじろいだ。私は勝己くんに反抗することはなかったからだ。

「勝己くんがいつもお世話になってるみんなにチョコあげたいの」
「ーーっ、仕方ねぇ。その代わり、そこのクソナードには渡すなよ」

席についている出久くんがびくりと肩を揺らす。言われなくとも、彼に渡すのは麗日さんだと最初から決まっていたのだ。私が渡すのはいつも勝己くんがお世話になっている。切島くんと瀬呂くんだ。ちなみに、上鳴くんへは耳郎さんが渡す。

「それから、チョコだけじゃ満足しねぇからな」

ぼそりと私にしか聞こえないように勝己くんが耳元で囁く。手は握っていなかったが、その意味を理解して、私は顔が赤らんだ。

「…はい、これ。本命だよ」
「おう、サンキュー」

それを振り払うようにして周りのチョコよりも綺麗な包装のチョコレートを渡す。勝己くんがチョコレートを食べるのは年に一度、私の手作りだけだと決まっているのだ。

「美味い」
「ふふ、嬉しい」

チョコレートを食べる勝己くんを見て自然と頬がほころぶ。そんな様子を見たA組の皆が叫んだ。


「頼むからよそでやってくれー!!」


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