コウノトリさん(1/3)



赤ちゃんを授かること。
結婚したら、自然とコウノトリさんがやってきて、自然といつの間にかおなかの中に新しい命が宿るものだと思っていた。人間ってすごいなあって思っていた。
その信じていたものが、いまひっくり返された。


「えっ、亜子ちゃ、え……ほんとに赤ちゃんの作りかた知らなかった!?」

「結婚したら、自然と、できるものかと……」

「えー……あー……でも亜子ちゃんだしなあ」


ははは、と笑う彼はたぶん少し酔っている。お仕事の帰りに、飲んできたらしい。アルコールのかおり。かおりだけで、私まで酔ってしまいそうだ。
教えてあげる、と、そのまま押し倒されて、アルコールのかおりが口いっぱいに広がった。ああ、頭がぼんやりとしてきた。私、お酒だめなのに。彼がくれた甘い甘いお酒はおいしくて、すぐに酔っ払ってしまいそうだ。


「初めてしたとき、なんでこんなことするんだろーって思わなかった?」

「つき合ってたり、結婚してるふたりは、裸で、抱き合ったりするものなんだーって……私、あの、"あれ"、は、赤ちゃん、つくる行為だって、知ってたけど……まさかあれがそうなんて」

「ははは、変なとこでピュアでかわいー。あー、そっかそっか」


アルコールの力はすごくて、普段は照れて全然キスをしてくれない彼がこんなにも。苦しいくらい私の唇に噛みついた。上がった吐息がほっぺをかすめ、愛を囁く。私もそっと、同じ言葉を返した。
彼を見つめてみれば、とろんとした表情。
髪の中に手が伸びてきて、そっと首筋を撫でる。


「――いい?」

「……はい」

「あ、ベッド……」

「うん……」


ここでも、いいんだけどな。
熱く重たい身体を動かすのさえ億劫で、早く抱きしめてもらいたい私がいる。強くて逞しくて、頼りになるあなたの腕で。私を力いっぱい抱いて欲しい。
それでも、「床だと亜子ちゃん痛いから」って私を気遣ってくれるやさしさが嬉しい。簡単に抱き上げられて、いわゆるお姫様抱っこの形でベッドまで。

ふたりで眠るにはちょっとだけせまい、シングルベッド。


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