コウノトリさん(3/3)



それから私に抱きついたまま、心地よさそうに眠ってしまった。


「……ばか。」


私の顔の真横で、気持ちよさそうに子どもみたいに寝息を立てている。こんなにかわいい寝顔をしてるのに、あんな――

思い出しそうになって、慌てて別のことを考えてみる。
それでもなんだか悶々として、どうしたらいいのかわからず、彼の髪をなでた。愛しい笑顔。ふにゃふにゃだ。甘い甘い、アルコールのかおり。
おおきな赤ちゃんみたい。

身動きもとれず、でも彼の体重と体温が心地よくて、私も眠たくなってきた。
身体が冷えてしまわないようお布団をかぶって、鷹雪くんを抱きしめた。それだけで気持ちがよかった。
大きな背中。これからずっとずっとこの背中に、腕に、守られて生きていける。心強い。

それから彼が目を覚ましたのは30分くらいあとのこと。


「……あれ!?なんで俺下はいてないの!?亜子ちゃんも半裸だし!?なんかした!?大丈夫!?」

「なんにもしてない。」

「いやいやいや、絶対なにか粗相を……」

「してない。ばか。」

「してないのに亜子ちゃん怒ってんの!?なんで!?」


重かったよ、苦しかったのよ、そんな言い訳を考えてみたけど言葉にはならない。


「おしえてくれるって、いったのに。たかくん寝ちゃうんだもん。ばか。」

「おしえ……あっ、あー!ごめん!じゃあ今から」

「やだ」

「ですよね!」


ごめんね、ごめんね、と何度もすまなそうに謝ってくれる彼。本当はね、怒ってないよ。ちょっと、ほっとしてた。頭を撫でると綺麗な瞳が私を見つめる。


「ごめん」

「ううん」

「キスしたら許してくれる?」

「うん。……あとね、それ、しまって」

「あ!あはは……ごめん……」


まだ少し残ったアルコールのかおり。甘い甘い。


「……酒の力借りたら、いけるかもって思ったんだけど」

「ん?」

「エッチ」

「あ」

「でもやっぱ、シラフで抱きたいなあって」

「……うん」

「ごめん。俺も、やっぱはじめてだから。なかなか。どう誘ったらいいのかなって、いろいろ。こんな形になっちゃってごめんね」

「私も、ごめんなさい。」


そんなこと、考えてくれてたんだ。
私がなかなか前向きになれないから、あなたに迷惑をかけてしまったね。余計なことを考えさせてしまったね。

少しずつ、ふたりの生活を暮らしを考えて、話し合って、ぶつかりあって、正しい方向へ向いていけたら。


「明日、また……」

「うん。はは、焦らないでゆっくりいこうか。それが俺たちらしいっていうか」

「うん。――ところで、避妊……? ってどうするの?」


こっそり耳元で囁いてみると、「明日ゆっくり教えてあげる」と赤い頬をした彼がいった。

うん、明日、ね。

今日はおやすみなさい。


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