おはようのちゅー(3/8)



私たちは高校生のころ知り合って、いろいろ経て、共に人生を歩むことになりました。

ほんとうに、いろいろ。

そして今年の6月(憧れのジューンブライド!)に小さな結婚式を挙げて、晴れて夫婦に。

夫・松本鷹雪くんと、
妻(私です)・旧姓夏目、現松本亜子。

それと2匹の猫たち、鷹丸と小夏と一緒に、ちいさなアパートでのんびり暮らしています。

贅沢な暮らしもしていないし、
お金だってそんなにないけれど、
だいすきな旦那さんと一緒、
だいすきな猫たちと一緒、
それだけでしあわせです。


そうそう。
これを話すと皆さん驚かれるのですが、私たち、いわゆる"おとなになった"のは結婚してからで、ずっとずっと清い関係でした。

だからなにをするにもはじめてで(しかも私はそういうことに関して全然知識がなくて)、どうしてか知識が豊富な旦那さんにいろいろと教えてもらいながら、少しずつ少しずつ、おとなになって、夫婦になっている最中です。

えっちな旦那さん。
ハグをするふりをして、
私の身体をふにふにとさわった。

もう!と怒ればいつものように「ははは!」と笑う。
何気ないことだけど、それがしあわせ。

えっちで甘いものが苦手な私の旦那さんは、
近所のスイミングスクールで先生をしていて、
小さな子からおじいちゃんおばあちゃんまで、
幅広い人たちに水泳を教えています。

水泳の方もまだまだ現役で、たまに大会にでていたり。

私自身スポーツに疎いのであまりよくわからないのですが、専門は背泳ぎだそうです。

そういえば、高校1年のとき、クラスの自己紹介で彼が「バックがどうのこうの」と言ったときにクラスがざわついたことを覚えています。

その理由をようやく知ったのは、先々週のこと。
無知な私は当時「背泳ぎってバックっていうんだ」なんてことしか考えていなくて、――実際に?して?、教えてもらうまでなんのことかさっぱりでした。


そんなことはどうでもよくて。


かっこいいルックスと持ち前の人の良さから、近頃、おばさんたちに人気があるとの噂を聞いてひやひやしています。
鷹雪くんなら心配ないと思うけど。

でももし――

そういえば昨日、やけにはずかしい言葉ばかり投げかけてくれた。
普段言ってくれないことばかり。

もしかしてそれってお酒のせいじゃなくて……



「昼、なにつくるの」

「あっ? あ、一応パスタ買ってあるよ」

「手伝います」



ほら、いつもはお手伝いするなんていわないのに。

そういえば昨日、飲み会っていってたけど本当なのかな。
いつもは事前に教えてくれるのに。
今回は。

疑ってしまう私が醜くて、いやなのに。
それでも疑ってしまう。いやな女。



「たかくん、昨日……」

「ん? 気持ちよかった?」

「うー!ばかばか!」

「はは、顔洗って、着替えて、寝癖なおして、ごはんの準備して、おはようのちゅーしよう」

「……うん」



私のこと、すき?

なんて愚問。

彼はいつも私のことを想ってくれている。と思う。

立ち上がった彼のシャツをひっぱれば振り向いて笑ってくれる。
メガネは外さないよ。



「お、おはよう」

「ん?」

「……まだ言ってなかったから」



彼の手を取って、私も立ち上がった。


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