わがまま。(3/3)
それでも"次"に進むことはなくて、上がった息の中、子供をあやすような瞳で私を諭す。
「ごめんね、今日は朝までぎゅってしててあげるから……ね。愛してるよ、亜子」
「うん――明日帰ったらね、ぎゅって、して、ください」
「うん、絶対。約束」
大好きな旦那さまの胸に抱かれ、心がぽかぽかとする。本当にあたたかい人。このあたたかさが愛しい。
「ごめんね」
「俺嬉しいよ。亜子ちゃんから誘ってくれるの、初めて?」
「さそ……!?そ、そういうわけじゃないの、ただたかくんにね、ぎゅって抱きしめてほしくて……それで……」
「ははは、そだね、ぎゅってね。今夜はいっぱい休んで、明日は仕事がんばって、それでセッ」
「やっ、いわないで、えっち……!」
慌てて口を押さえればにっと笑う旦那さま。いたずらっぽく笑う、この少年の面影を残したような笑顔もすき。
少しの間見つめ合って、それからおでこに唇が降ってくる。
「おやすみ、亜子」
「……おやすみなさい。たかくん」
火照った身体をあなたに預ければ、ゆっくりと心が満たされていくようで。
身体の奥でめらめらと燃えていた、いやらしい欲望も次第に弱まっていって。
やっぱり鷹雪くんにこうして抱きしめられると、嬉しい。しあわせな気持ちが溢れてくる。
もっともっと愛して。
私だけを見ていて。
そんなわがままなことを思ってしまう。
しばらくして、彼の寝息が耳を掠める。ゆっくり、ゆっくり、呼吸を合わせて、同じ夢の中へと落ちていけたら。
起こしてしまってごめんなさい。
でも、目をさましてくれてありがとう。
強く抱き着けば、私を抱きしめる腕に力が入って。
おなかとおなかが、心と心がそっとふれあって。
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不器用恋愛