私の胸くらいまであるバイクを、苦しい顔を見せずにおす壱くん。
そんな姿を見ると、やっぱり男の人なんだなあと思う。
私だったらきっとバイクに押し潰されてぺちゃんこになっちゃう。
――と、私の視線に気がついたのか、私とバイクを交互に見、
「バイク、興味ある?」
「う、ううん!ぺちゃんこになっちゃうから……あ、えっと。いつから乗ってるの?」
「ぺちゃんこ……? んー、高2の頃からかな」
「そのバイクもそのときに?」
「親父のだよ、これ」
親父と聞き、壱くんにもお父さんがいるのだと当たり前のことを思う。
ついつい私のお父さんが壱くんのお父さんだと誤認してしまっていた。
「壱くんのお父さんはどんな人?」
「うーん……岳司さんとは正反対。のんべえで女好きでいい加減だったよ」
「壱くんに似てる?」
「あー……、そうだな。俺もいい加減だしな」
「ご、ごめんなさい!そういう意味じゃなくて……」
私があたふたとしていると、壱くんは立ち止まってぷっ、と吹き出した。
――もしかして。
また、からかわれた?
「顔とかがどうかって聞きたかったんだろ?」
「あ、もう!」
ぷ、とほっぺを膨らませると、「ごめん」と壱くんは笑う。全然反省してない。