28

決闘クラブで私がほぼ初めてと言ってもいい速さでの魔法習得をした後、大広間は騒然とした。ハリーが蛇語を喋ったからだ。喋ったっていうか、単なる真似みたいなもんだと思うんだけど違うらしい。蛇語習得してるとか魔法界やばくない?どこ目指してんの?

「そんな、グリフィンドールに継承者がいたなんて……!」
「どうしてグリフィンドールにいるのよ!いやだわ、私石にされちゃう……!」

寮の部屋に戻ると、頭を抱えてそう言い出した2人にはてなマーク。

「継承者?」
「ハリーのことよ」
「ハリーが何を継承してんの?」
「パーセルマウスよ!ハリーはサラザール・スリザリンの末裔だわ!」
「パーセルマウス?」

ちょっと話についていけないが、サラザール・スリザリンというと名字からしてスリザリン寮の創設者だろう。どっかで聞いたことあるし。しかしその末裔がハリーなのか?それは初耳。そんな有名なら知ってそうだけど。あ、でも有名人の血を持ってるって言うのを隠したい人っているよね。話題になるとか色々面倒くさそうだしね。ハリーはなんかビッグな二つ名で騒がれるのも嫌がっていたし、わからなくもない。しかし蛇語習得って。サラザール・スリザリン、蛇とお友達だったの? どっかの姫様みたいだな。

「いい、ナマエ、あなた絶対ハリーと話しちゃダメよ!近寄るのも!」
「えっなんで?」
「石にされるわよ!?」
「は!?」

どどどどういうことだ!?驚き立ち上がった私の方をサーシャががしりと掴んだ。真面目な顔でいう。

「サラザール・スリザリンの秘密の部屋はハリーに継承されているのよ。つまり、彼が、コリンやミセスノリスを、石にしたの!」
「は、」

はあああああ!?私の絶叫が部屋に響き渡る。へなへなと足から力が抜け、座り込んだ。う、うそでしょ。いやいや、そんなわけ。え?なんで?

「で、でも、あのとき、ミセスノリスを発見したときハリーいたよ?」
「カモフラージュかも」
「その説はありそうよ。いつ石になったかなんてわからないんだもの、あとからハーマイオニーとロンを連れてあたかも今発見したかのように振舞ったのかもしれないわ」
「アリアの言う通りよ」

んなアホな。頷く2人に、ぽかんと口を開けてしまう。ハリーそんな演技派だったの?

「でも、なんでハリーが。ミセスノリスもグリフィンドール生のことも石にするメリットがどこに?」
「それは……わからないわ。でも、何かしらあったんじゃないの?」
「普段よくフィルチにつっかかられてるもの、その仕返しかもしれない」
「たち悪すぎない?」
「スリザリンの末裔なら納得よ」

2人の言い分に、私は終始納得と困惑と疑心で揺れていた。でもハリー、ショック受けてた気がするんだけどな。


それからしばらく、私はサーシャたちに言われたまますっきり3人を避けた。まあ、寮から出ず、常に一人行動で、というところのみだったんだけど。まるで去年に戻ったみたいだ。
ついでに私は図書館へ行ったときに、少しずつ創設者について調べてみることにした。有名なので文献はいくらでもあるし、探しやすいだろう。

「ほーん、マグルが嫌い、ねえ。蛇はペット?爬虫類愛好家か……」

図書館の奥でぶつぶつ言いながら調べる。どちらかというと、闇の魔法関係を調べた方がサラザール・スリザリンについて詳しく書いてあることがわかった。ほとんど普通の文献は悪者として書かれている。でも、闇の魔法関係の本の方が多いあたりどうも時代の流れを感じるね。暗黒期が長かったらしいからなあ。暗黒期とか超中二病感ある。

そうこうしているうちに、クリスマスがやってきた。外は豪雪で、不安を煽るような天気。それもこれも、先日また被害者が出たからだ。生徒はほとんどが帰省し、去年よりも少ないらしい。そりゃそうだ、私だって帰りたい。ただし、日本のお家に。
新たな被害者は幽霊だった。グリフィンドール寮の、首がない人。なんて言ったかな、ニコラス?さんだっけ?まさか幽霊も石になるとは思いもしない。実体が無いものを実体があるものに変えるというのは、かなりすごい事なんじゃないかと思う。まあ魔法はファンタジーだし、なんでもありだからな……。
幽霊の彼が石になったことでハリーの立場は更に悪くなった。間が悪いことに、第一発見者はハリーらしい。ここに見た目は子供頭脳は大人の某探偵がいたら容疑者扱い確実だろう。いなくても確実なんだけど。
だが、どうにもきな臭い、とも思った。これは私のカンだけど、ハリーは恐ろしく運が悪いことに遭遇しているだけであって、別に継承者?だのスリザリンだの関係ないんじゃないのか?
私は悩みに悩んだ末、やっぱな、と自分のカンを信じて、いつも通り行動をすることにした。警戒するに越したことはないけど、人を無闇に疑うのもねえ。今更とか言わないでくれ。反論できない。

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