26

グリフィンドール寮の生徒が、石になったらしい。
その類の噂が駆け巡るのはとても早く、朝食の席はそれでもちきりだった。ネビルは怖いと泣いていたし、アリアはバカらしいといいながらも声が震えていた。私はと言うと、大広間を急いで出てトイレへ行き朝食にと食べたフルーツたちを戻した。こんなに気分悪いの、初めてだ。あまりにも被害の存在が近すぎる。石になるだって?元に戻るとはいえ、それでも一時でも同じ屋根の下にいる人が石化した、なんて、冗談じゃない。信じられない。

それからしばらく、私は更に引きこもるようになった。もちろん怖さもある。でも私の中に渦巻く怖さというものの大半は気味の悪さだ。
怪物とか部屋とか、目に見えない、見つからない、わからない気味悪さ。まるで日本のホラー映画みたいで、ホラーが苦手な私は暗闇を避けるようになった。日本人形出てきたら意識失う自信ある。
しかし怖い怖いと思っていようが時は流れる。そう、くーりすますがことしもやーってーくる。

「かえりたい……」
「帰ればいいじゃないか」

マクゴナガル先生が置いていったクリスマス居残り名簿に名前を書いたあと、談話室の隅で項垂れると横から話しかけられた。

「ウィーズリー」
「ジョージだ。ナマエ、怖いんだろ?」
「そりゃ怖いって……」

石だよ?既に被害者は出てるんだし、逆に何故みんな平気なの?どんだけ図太いんだ魔法界。
体育座りをして腕に顔を埋め、濁った声を出す。彼曰くジョージは、私の隣に座ると私の頭をそっと撫でた。女の子に簡単にそういうことするといつか刺されるぞ。極端というなかれ、いずれはそうなるだろう。多分。

「家に来るか?」
「は?」
「無理に残らなくてもいいだろ?」
「いやいやいやお邪魔出来ません」
「別に邪魔じゃないさ。ジニーは喜ぶだろうし、パーシーもフレッドもいる。ロンは残るらしいけど」
「ロンが?」
「やることがあるんだと。俺達はママが悲しむから帰るけど。ママもパパも、ナマエのこと歓迎すると思うぜ」

だから来いよ、そう優しい言葉を掛けてくれたジョージは良い男になるだろうと思った。しかし、私にその選択は出来ない。 肩をすくめて苦笑した。

「ありがとう、ジョージ。でもご迷惑はかけられない。気持ちだけ受け取るよ」
「……たまには甘えても、」
「だーいじょうぶだって」

もう一度ありがとう、と言うと、ジョージはおう、と小さく返事をした。



「ミスミョウジ」
「はい」
「この教科書の手順だが、我輩にはすり潰すと書いてあるように見えるのだがね」
「私もそう見えてます」
「貴様のそれはすりつぶすのではなく叩き潰しているだけだばかもの」

スパンッ。ボードで頭を叩かれ2点減点された。ちゃんと!すりつぶしてます!棒が重くて叩いてるように見えてるだけです!そう反論すると、セブルス・コジュウト・スネイプ先生は持ち上げる必要はないと更に2点減点した。つまり4点減点。世知辛い。
ぶつぶつ言われながらも持ち上げずに棒を動かす。と、突然教室の奥側から大きな音が聞こえた。ファッ!?

「い、いたい……!」
「動くな!」

ネビルの泣き声が聞こえて駆け寄ろうとすると、教室中にスネイプ先生が注意する。私はぴたりとその場に留まり、はらはらと人だかりでよく見えない奥を見た。教室の一番前の調合台が定着してしまった私からはよく見えなく、歯噛みする。席替えしようよ先生。ちなみに定着しているのは私ただ一人である。まっこと遺憾。
はらはらどきどきと遠くから見ていると、どうやら鍋が爆発したらしく、生徒何人か被害が出ているらしい。スネイプ先生は即座に解毒薬を配り、お怒りで鍋を消し、原因が解ったら退校処分だと低く唸った。ひええ。一種のテロじゃないのこれ、下手すりゃ死んでたんじゃないの。魔法界マジ怖い。今年厄年?

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