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あの石になった猫は、ミセスノリスというらしい。フィルチさんの大切な猫で、猫はいつも生徒を監視していたのだと、大広間で耳に入ってきた。ヨーグルトを食べる手が止まる。気分が悪くて、席を立ちそそくさと寮に戻るとジニーちゃんに声をかけられた。

「ナマエ、食べてないんでしょう?顔色がひどいわ」
「やだなあ、ちゃんと食べたよ。大丈夫だから」

あれから数日、あの廊下の壁の血の文字は消えずに残っているし、猫が回復したという知らせはない。校内は猫の話でもちきりだ。どこへ行っても耳に入ってくるそれは、私に光景を思い出させて気分が悪くなるの悪循環だった。私が寮のベッドに引きこもるのも自然と言えよう。
そうしているうちにまた、次はスリザリンの後継者?継承者?とやらの噂で持ちきりになった。なんでも、スリザリンの創設者のサラ……サラ……サラなんとかさんが、秘密の部屋というものをこの城の中に持っているらしい。その部屋の中には、恐ろしい怪物がいるんだとか。トロールに怪我させられた私が言うのもなんだけど、もしそれが本当ならそんな話してる場合じゃないだろ、というセリフは飲み込んだ。
ついでに、例の危険スポーツの試合が近づいてくると話は危険スポーツとスリザリン関係の2種類になった。危険スポーツがグリフィンドール寮vsスリザリン寮なのもいけない。なんでこのタイミングなんだ。私の心に優しくない。

「なあ、ナマエ、行こうぜ」
「ずっと引きこもってたって気が滅入るだろ?ほら、グリフィンドールチームの勇姿を見てテンション上げろよ」

もちろん私は危険スポーツの観戦に行くどころか部屋から出る気はなかったのだが、サーシャに無理やり談話室へ連れていかれ、談話室から無理やりディーンとシェーマスにスタンドへ連れていかれた。見事な連携と力技に負けざるをえない。仕方なく座って見ていたが、やはり危険で目をそらしていた。のだけれども、2人の「変だ!」という声に見てしまった。

「ぎゃああぶつかる!なあぶつかるって、中止しないの!?」
「ハリー!何してんだ!」
「聞けってばよ!」

黒い玉のようなものがヒュンヒュンとハリーめがけて飛んでいく。ハリーはそれを避けるのに必死らしく、スタンドの間近まで来たりもした。危険。危険すぎる。どうやら誰かもそう思ったらしくタイムアウトをとり中断されたが、何をとち狂ったか再開された。いや、変ならやめとけよ。不備だよそれは、多分故障かなんかだよ、危ないからやめとけってまじで。しかし現実はそんな私の内心を華麗に無視し、黒い玉がハリーに当たるのが微かに見えた。

「うわあああ!ねえ!当たったよね!?ハリーにいま当たったよね!?てか落ちたんだけど!生きてる!?無事なの!?」
「よっしゃああああ!」
「よくやったハリー!」
「だから聞けよ!」

黒い玉が当たり、地面を転がったハリーはボロボロだ。しかし手には金色があり、まあ、勝った、らしいが………勝利の代償でかくない…?
私は大慌てでスタンドから下り、ハリーが運ばれていった方へ走った。ついたころにはハリーは担架で運ばれていくところで、何故かロックハート教授がいた。

「おや、ミスミョウジではないですか!私に会いに来てくれたのは嬉しいですが、君だけを優遇することは出来ない。何故なら私はギルデロイ・ロックハートなのですから!」

ちょっと何言ってるかよくわからないロックハート教授の言葉を愛想笑いで流してハーミーの元へ行った。そして小声で話しかける。

「何があったの、ハリーは大丈夫なの」
「大丈夫よ、ただ、ロックハート教授がハリーの腕を消しちゃったのよ」
「は!?」
「ち、ちがうの!ごめんなさい、私の言い方が悪かったわ。その、教授は……折れたハリーの腕の治療をしようとして、少しミスをしてしまったらしいのよ」
「…………それで、腕を消した?」
「腕の骨、よ」

ボーン。言われたそれを繰り返して、頭を抱えた。それはミスの範疇に入れていいものなの?訴えたら勝てるレベル。ハリーのお見舞いには、気休めでチーズと牛乳を持っていった。なんか新たに生えるらしいから、次はもっと頑丈な骨を育ててくれ。

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