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スネイプ先生とルーピン教授を抜いた先生方はカウンターに並んで座り、ハリーはバレないようにと机の下に隠れた。私も机の下に、と言われたが入るスペースがないので先生たちに背を向ける体勢に変えた。黒髪くらいならホグワーツにも腐るほどいるし大丈夫だろうと思って。ついでにフライドポテトも注文する。え?もちろんハリーのお金です。出てきたポテトは頼んでないのにチーズがたっぷりかかっていた。これは太る。

「呑気に何してるんだよ!」
「しー。ハリー、ポテトたべる?」
「うん、ありがとう」

君のお金を勝手に使ったというのに優しい子である。ルーピン教授みたくいつか2億円くらい騙し取られないようにね。

「一体何を話してるんだ?」
「しっ、気づかれるわ」

ハーミーが魔法で観葉植物を動かしうまい具合に隠された後ろで先生方の話を盗み聞きしていると、面白いことにシリブラの話が出た。このパブのマダムも知っているらしい。美魔女ってやつ?魔女だけにってかやかましいわ!
びくりとしたハリーに服の裾を捕まれ、手を差し出すとぎゅっと握られる。

先生方はジェームズポッターとかシリブラとかハリーの名付け親だとかの話をした後、13年前のハリーのご両親が亡くなられた事件の話をした。私からしたらまさに他人事なわけだがハリーは違う。手を握る力はどんどん強くなっていたが、私はそれを甘んじて握り返した。
シリブラはハリーの両親を殺しマグルを殺し、親友を殺して投獄されたらしい。しかしそこまでの事をしておきながらのこのこ捕まるのも不思議なもんだ。ルーピン教授の話からすると優秀だったようだし、普通は上手くやるもんじゃないのかね。それともやけになっていたとか?どっちにしろよくわからないが、ただ一つ言えるのはルーピン教授が気の毒すぎるということだ。親友を一夜にして亡くして、更に2億円騙し取られて。壮絶な人生だ。

先生方の話が終わったあたりでハリーはしんみりとしながら帰るといい来た道を通って帰った。もちろん私も。坂がなかなかにきつかったが、ハリーが引っ張ってくれたのでなんとか戻れた。悲劇の英雄は、日に日に成長している。


翌日、ハリーは少し気落ちした様子ながらも普通に過ごし、普通にハーミーに怒られ、普通にハグリッドのところへ向かった。私も誘われたが用は生徒の怪我の件らしく、私はなんら関与していないし外は寒いから丁重にお断りした。

「あれ、ナマエ、ハリーたちと行ったんじゃないの?」
「外は寒い」
「そうだね、今日も寒いね。あ、そうだ、僕まだ変身学のレポートが終わってないんだ。ナマエ、よかったら一緒にやらない?」
「おっよしきたやろう。図書館行く?」
「廊下も寒いけどいいの?」
「嫌だけどここで出来る気がしない」
「……うん、僕もそう思う!」

グリフィンドールマフラーをぐるぐるに巻き付けてコートをぎゅっと着てネビルと共に寮から出る。嬉しいことに図書館はぬくぬくと暖かいのでどこぞの地下室のようにコートをひん剥かれて寒さに震えることもない。スネイプ先生はマジで体温感覚がおかしいと思います。

図書館でネビルとこれがこれであーだこーだと話しながらレポートをやっていると、黒いサラサラの髪を靡かせたチョウがやってきた。あの美男美女限定の謎の風現象が起きている。同じアジア系とて超べっぴんさんなチョウはミジンコ並みの私からすれば眩しくて仕方がなく、思わず拝んでしまった。

「ハァイナマエ、……何しているの?」
「ハッ!あまりにもチョウが眩しくてだね」
「ふふ、おかしなこと言うのね。そちらは、この前も会ったわね。ナマエのお友達でしょう?私はチョウ・チャン、レイブンクローの4年なの、よろしくね」
「えっ、あっ、ぼ、ぼく?えっと、僕ネビル・ロングボトム……知ってるよ、レイブンクローのシーカーでしょう?すっごく速いんだ!」

照れ照れとしながらもキラキラと目を輝かせていうネビルにチョウは嬉しそうに笑った。マジか、チョウも危険スポーツの一員なのか。しーかー?とかはよくわからないが、とりあえず強いことはわかったので箒がどうのこうのとか前の試合がどうのこうのとかで危険スポーツの話で盛り上がる2人に合わせててきとうに頷いておく。ほぼ空気なのは気にしない。

「ナマエ、わかってないでしょ」
「そうなの?」
「ナマエはクィディッチが好きじゃないんだ」
「どうして!?あんなに面白いのに」
「超平和国で育った私からすりゃ危険極まりなくて見てて心臓が飛び出そうだから」
「意外だわ」

一番盛り上がっていそうな顔してるのに、というチョウの言葉に微妙な表情になる。顔て。どういう顔だそれ。醤油顔か。

「残念、私の試合も応援してもらおうと思ってたのに、仕方ないわね。あ、そうそう、ナマエこれ」
「……なにこれ?」

チョウから思い出したように差し出された袋を受け取る。紙袋のため中が見えず、そもそもチョウから何かをもらうようなことは何も無かったはず。もしかして貢ぎ物?

「半分違くて半分正解ね。前、ミサンガを頼んだでしょう?その糸よ、この前のホグズミードで買ってきたの。それから、お礼みたいなものでお菓子!糖蜜ヌガーは食べるとき気をつけてね」
「糖蜜ヌガー!?口が開かなくなっちゃうよ、気をつけて」
「なんつう恐ろしいもんプレゼントしてくるんですかチョウ先輩」

魔法界のお菓子業界どうなってんだ。拷問器具レベルかよ。ふふと可憐に笑うチョウにチベスナになりながら「ありがとう承った」と返す。

「ミサンガは結構すぐ出来ると思う」
「はあい、楽しみにしてるわ。じゃあね、ナマエ、ネビル、またお話しましょう」
「うん、バイバイ!」

返事の代わりにヒラヒラと手を振ってチョウを見送る。やはり美男美女に適用される風が流れているらしい。ちなみにこのあと図書館でおやつに、ともらった糖蜜ヌガーを食べてみた。事前にネビルからすごく注意されていたのでちびっとだけだが、少量で酷い粘着力。マジでくっつくかと思った。これはお菓子じゃなくて強力接着剤として販売すべき。魔法界ほんとおかしい(心の底から)

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