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人狼の見分け方は教科書に載っていたものを書いたが、殺し方は教科書以外にもなにかないかと図書館へ行くとなんと、お久しぶりのマルフォイくんがいた。包帯を巻いた手で高い位置の本を取ろうとしていたため、声をかけてしまった。

「取ろうか?」
「は?……なんだ、モンキーか。僕に何の用だ?生憎暇じゃないんだが」
「いや、手、怪我してんでしょ?本取るのしんどくないかと思って」
「…………はあ!?」

私の言葉に何故か驚いたマルフォイくんに慌てて静かに、とジェスチャーする。雨の日の図書館は大抵よく響く。ほぼ誰もいないからね。まあいないのはいつでもなんですけど。 マルフォイくんは眉間に皺を寄せて唇を噛むという怒ってんだか泣きそうなんだかみたいなよくわからない表情をした後「どうしてもというなら取らせてやる」と言った。ほ、ほう。まあいいけど。

「どれ?」
「右から3番目、魂の振動という本だ」
「あ、これか。はい。……数占い学?」
「それがどうした」
「いや、特には。私もとってるからちょっと気になっただけ」
「モンキーが?数字なんて使えるのか?」

ちょっとバカにしすぎじゃないだろうか。まあいいけどさあ!苦笑して、お邪魔したね、と行こうとすると、マルフォイくんは「お前は何しに来たんだ」と言った。

「ん?」
「お前は、図書館に何をしに来たんだ、と聞いたんだ!」
「ああ、人狼についてちょっと調べようかと思って」
「人狼?……スネイプ先生か」

少し苦そうな顔をしたマルフォイくんに頷く。確かマルフォイくんはスネイプ先生を慕っていたはずだが、その表情の意味やいかに。マルフォイくんはぼそぼそと話し始めた。

「スネイプ先生は、何をしようとしているんだろうか。あんなに飛ばして人狼をやるとは思わなかった。確かにルーピンは幼稚なものばかりでつまらなかったが、ミイラだってやらずにーーいや、なんでもない」
「……スネイプ先生ってなんだかんだ意味しっかりしていること多いから、何か理由があるんじゃないかな」

へらっと笑って言うと、マルフォイくんは驚いた顔をして「話すことは許可していないぞモンキー」と言い少し拗ねたような顔で去っていった。スリザリンの授業でもやりたい放題だったのかスネイプ先生……。



翌日の天候は最悪だった。てるてる坊主は英国では作用しないらしい。しかしどう見ても中止した方がいい天候でも開催されるらしい。危険スポーツはむしろ危険を探求するスポーツだったかな……?
大雨だし強風だし、という中でもスタンドは生徒だらけ、教師陣もしっかりといた。私というと、うん、スタンドでも風の凌げる一番下端の、校舎側にいた。十分当たるんですけどね。雨粒が風に叩かれてめっちゃ濡れる。びちょびちょで最悪だ。屋根の意味がない。あと普段ろくに見えないのにこんな天気で当然ハリーたちが見えるはずもない。赤っぽいのと黄色っぽいのがヒュンヒュンしてる。風になってるよ君たち……。私は風邪を確実に引きそうです。毎度一緒に見ていたディーンとシェーマスのクレイジーコンビは今頃上の方で騒いでるんだろう。しっかし見えないなあ、というより目を開いているのもしんどい。ハリーには悪いけど帰りたいです……。そう思ったときだった。

「……え?」

雷が光った。黒いヒラヒラが、私の目にはっきりと写る。待てよ、ここには生徒が、っつうか今は試合中じゃーーーー!
ピカリ、また光る。息を呑んだ。選手が、赤い誰かが、吸魂鬼に襲われている。
私はただ茫然と見ていた。白い鳥のようなものが吸魂鬼を追い払う。雷がまた光る。白昼夢か、あの光景がまた再生された。忘れた頃にやってくるらしいそれは、雷の光に照らされた黒い犬をこれまたしっかりと私の目に映した。

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