ALBATROSS

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名門純血家の姉妹の妹2

元はコレ


「アボット・ハンナ」

呼ばれた生徒が小走りで大広間中央の椅子に座る。ボロボロの帽子を被り、帽子は「ハッフルパフ!」と声を上げた。ハッフルパフの席からは歓迎の声が上がり、小さな魔女は頬を赤くしてそこへまた小走りで向かった。
その様子をいつもの如くつまらなさそうに名前は見つめる。自分もこのあとそれをやるというのに緊張の色は見えず、常と変わらないその態度にパンジー・パーキンソンは苛立つ。
パンジーの想い人であるドラコと共に列車から出てきた名前を初めパンジーは嫌がったが、格上の名字家の人間を邪険に出来るはずもなく後ろを歩いた。マルフォイ家のドラコが名前に話しかけているというのに、名前は見向きもせず聞き流すだけ、そんな様子にも苛立った。
緊張して、スリザリン以外になったらというプレッシャーもあるなか、名前は寮もどうでもいいと怜悧な態度で中央を見ている。

「マルフォイ・ドラコ」
「先にスリザリンで待っている」

自信満々だがどこか不安そうなドラコを一瞥して名前はまた中央を見る。気にもしていないというその態度にドラコは不満そうだったし、パンジーとて不満だった。声の一つくらい、返事の一つくらいすればいいのに。
無事にドラコはスリザリンになり、そしてパンジーもスリザリンに選ばれた。
残るは名前だけだった。パンジーは、もしかしたら名前はスリザリンではないかもしれないと思った。だって、スリザリンの席で迎えてくれた名字家の長女、ヴェロニカは名前とは大違いだったのだ。

「ハァイ、私はスリザリンの監督生のヴェロニカ・名字、初めましてーーではないけれど、歓迎するわミスパーキンソン、よろしくね」
「は、はいっ!」

ふわりと微笑んだ顔は可憐でパンジーの心がドキドキと高鳴った。あまり固くならないで、と言う声は優しく、席についてもパンジーはヴェロニカから目を離せなかった。それはドラコも同様らしい、彼は青い目でじっとヴェロニカを見つめていて、ヴェロニカと目が合う度に頬をピンクに染めている。

「ドラコは、ヴェロニカさんが好きなの?」
「す、す!?何言ってるんだ!やめないかこんなところで」

顔を真っ赤にするが、否定はしない。そんなのバレバレだ。しかし、パンジーはヴェロニカが相手なら無理もない、むしろドラコの方に嫉妬しそうだと思った。それだけヴェロニカは魅力的で、尚更あの名前と姉妹なんて思えなかった。



「ふむ、君は不思議だ。純血主義ではないらしい」
「変な事言うな、疑われるだろう」
「周りには聞こえておらぬよ。難しい、今年はとても難しい年だ。グリフィンドールに入れば君の勇気が役立ち、ハッフルパフにいけば君は誰よりも友人を思う。レイブンクローでは優秀な能力を伸ばし、スリザリンならば未来、君は素晴らしい魔女になる。ううむ、難しい、難しい」
「何が難しい、スリザリンにすればいい。私は名字だ」
「確かに、確かにそうだが、この城で家など些細なことに過ぎないのだよ、小さな魔女」
「そんなの城だけだ、家では違う。ご存知か?城には7年間しかいられないらしい」
「確かにその通りだ。ーーでは、スリザリン!」

思ったよりも時間がかかったが、当然スリザリンの席からの歓声は大きかった。その中で姉も嬉しそうに笑っている。去り際に帽子から「私はグリフィンドールに入って欲しかったがな」などと言われたが、来世でなと名前は鼻で笑う。名字家の者がグリフィンドールなど、父から殺されるに違いないのだ。
席につくと、すぐさま隣に姉が来た。校長の話などそっちのけでニコニコと笑み、名前にこれがおいしいあれがおいしいと料理を盛る。そのどれもが名前の好物で、名前のこころはほんわりと暖かくなった。

「一瞬、スリザリンにこないんじゃないかって不安になってしまったの。でも無事に来てくれて安心したわ、大好きよ名前」
「私がスリザリン以外ありえないでしょう」
「ふふ、そうね、そうよね。帽子さんとはなんてお話してたの?」
「私の可能性がどうとか言っていましたが、スリザリンが一番に決まっていますから」

名前の模範的な返答に周囲の上級生は満足そうに笑い、名前の頭を撫でる。特にフリント家の次男はぐしゃぐしゃに撫でて姉から怒られていた。ふと、視線を感じ少し目線をそちらへ向けると、グリフィンドールの席のグレンジャーと目が合った。名前は口元だけ少し微笑みまた正面を向く。パッと笑ったグレンジャーが少し見えた。

寮の部屋はダフネ・グリーングラスと同室で、やはりダフネに沢山気を使わせてしまったがまあそのうち慣れるだろうと思い放っておいた。地下の寮はどことなく肌寒く、これはショールを持ち歩いた方がいいかもしれないようで、その夜名前は毛布を多めにかけて眠った。名前はあまり寒さに得意な方ではない。沢山毛布をかけたおかげで暖かくぐっすりと眠った翌日、授業が始まった。

「おはよう名前、随分ゆっくりなんだな」
「……おはようドラコ」

談話室に降りるとドラコやパンジーたちがいた。返事をして食事をしようと寮を出ると、何やらぞろぞろとあとをついてくる。

「なっ、僕達は君を待っていたんだぞ!酷いじゃないか!」
「……すまない、そういったことに疎くてね。ありがとう」

集団行動めんどくせえな、と思いつつ名前は歩調を合わせて大広間へ向かう。代わる代わるに声をかけられ、面倒なので頷きで返した。ノット家、ザビニ家、パーキンソン家、クラッブ家、ゴイル家、ブルストローズ家、そしてマルフォイ家……いくらなんでも多すぎじゃないか?しかしスリザリンでは通常らしい、上級生も集団がいくつか見えたためナマエは諦めてその集団のまま席についた。いそいそとザビニ家の息子がナマエに料理を盛り渡される。ローストビーフ、軽めのサラダ、ベイクドビーンズとマッシュルームソテー、そして柔らかいパン……まあまあ量はあるがかなり健康的なメニューだ。少し驚いてザビニを見ると、彼はパチンとウィンクをして召し上がれと言う。給仕みたいなことをして嫌ではないのか。しかしそれは黙って飲み込み、料理に手をつける。

「ありがとうザビニ」
「いいや、レディのためなら当然さ」
「そうか、なかなかの紳士だな」

イギリス飯はブレックファーストが大体美味しいものだ。それは魔法界でも変わらない。ぺろりと平らげると今度はドラコが紅茶を入れてくれた。なかなかの味だ。

「……淹れるのが上手だな、驚いた」
「当たり前だろう、母上に叩き込まれたんだ」
「ああ、マルフォイ夫人は料理がお上手だったな、素敵なお母上だ」
「自慢の母さ! そうだ、少し早いが家でやるクリスマスパーティーに是非名前も来るといい、母上が少しだがカップケーキを焼いてくれるんだ」
「それは楽しみだ」

流れるようにマルフォイ家の招待を受けてしまった。後々招待状が来るだろうからそれを父に任せればいい。
不審に思われないように社交はある程度して、だんだんフェードアウトすればいいのだ。ちょうど大広間から出ていくハリーポッターの姿が見え、上手く行けばいいが、と少し不安になってしまった。

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