DQ6 | ナノ
 18-4

「よくぞおいでなさった」
 玉座の前では、王自ら椅子から立ち上がり、レック達に握手を申し出た。
 まだ二十歳前後の若々しい陛下である。初々しさが残っており、まだ王になってから数年しか経っていない。肖像画で見た先代の王とは眼元が似ているけれど、性格や雰囲気は全く似ていないそうだ。とてもおおらかと評判で、国民からの人気と期待と政治力も高い。
「私がこの国の王だ。私はこの国を今よりさらによくするため、旅の者たちの話も大切だと考えているんだ。それで、今一番の気がかりは、この世界の事。どうだ?そなた達から見て、ムドーが倒れたこの世界は平和になったと思うか?」
「……いいえ」
 レック達は顔を横に振った。
 真に平和が訪れれば魔物などでなくなるはずだ。
「やはりな…。私はもしもの時のために、伝説のスフィーダの盾というものについて調べている。その盾はどれほどの力を持っているのかわからぬが、こうして何かをしないといられない性分でな…。ムドーが倒れてからも現れ続ける魔物たち…おかしいと思っていたんだ。おそらくだが、ムドー以上の強力な者がいるとしか考えられない」
「…そう、ですね。あの…そのスフィーダの盾について、詳しく教えてくれませんか?」
 レックは訊いた。


「ねえ、ミレーユはどうして一緒に行かなかったの?」
 馬車の中で、バーバラはのんびり編み物に興じていた。
 ミレーユに教えてもらってやっているのだが、やはりうまくはいかず、ボロキレのような出来である。
「え…あたしは…別に」
「なんか…理由がありそうだね。もしかして…ここ…ミレーユの故郷だったりするとか」
「………」
 ミレーユは否定も肯定もせず、何も言わなかった。
 ただ暗い顔をしているだけ。
「そうなんだね…だから、ここに残ったんだ。まあ、行きたくないって事は、だいたいがそこが故郷だったり、嫌な思い出がある場合だったりがほとんどだもんね。何があったかわからないけど、あたしはミレーユがどんな過去を持ってても、別に気にしないよ。そんな暗い顔してるくらいだもん…相当辛いことがあったんでしょ?」
「……ごめんなさい…今は言えないわ」
「ううん、いいんだよ。人には話せない過去の一つや二つあるもんね。いつか…あたしの事…女の親友だって認めてくれたら、話して?」
「うん…ありがと…バーバラ」

 数時間後、レック達が戻ってきた。
 スフィーダの盾の情報はあまり得られなかったが、それはどこかの海沿いの洞窟にあるとの事、洞窟に入ってからの仕掛けの事を教えてもらった。まだまだ情報としては不足だが、きっとどこかに有力な情報があるはず。
「さあ、とりあえずまだ行っていない町や村をまわってみるか」
「そうですね。どこかにまだ見ぬ伝説の武器と防具について知っている人がいるかもしれませんし」
「マーメイドハープがあれば、どの大陸も行き放題だもんね」
「旅をしながら、世界中の酒も堪能できるしな」
 ハッサンが舌なめずりをする。
「みんな、魔王を倒すことも忘れちゃだめよ。あと、レックの実体探しもね」
 すっかり元気になったミレーユが声をかける。
「「「おーー!」」」
 旅はまだまだ続く…。


十八章 完







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