DQ6 | ナノ
 12-3

 それから至高の戦闘がはじまった。
 バトルレックスの岩石投げや、激しい稲妻を、残像でも見えるかのように避け、まずは素早い一撃を硬い竜の背中に叩きこむ。
 鋼鉄の皮膚からは赤い血が流れ、怒ったバトルレックスはがむしゃらに武器を振り回す。その隙に青い閃光は爆発魔法イオを唱える。爆発の直後、しっぷう突き、はやぶさ斬りと連続で斬りつける。
 これだけで、イオの煙の中から現れたバトルレックスは傷だらけでフラフラだ。魔物の特有の邪気交じりの赤い血を滴らせている。そんなあまりに素早い攻撃殺法に言葉が出てこない一同。あの一瞬で息を乱さずにここまで動ける事に圧倒される。
 完全に頭に血が上ったバトルレックスは再び炎を吐く。が、今度はそれを斬るように受け流す。
 もはや、彼のワンマンショーだった。青い閃光は剣先に最大限力を込める。
「とどめだ」
 ドラゴン系に絶大なダメージを与えるドラゴン斬りを放ち、たちまちバトルレックスは力なくしたかのようにドスンと昏倒した。
「…すげぇ…」
「ええ…」
 凄まじい戦いぶりに、ハッサンやチャモロが息をのんだ。
 もちろん、他の仲間達も茫然としている。
 青い閃光は動かなくなったバトルレックスの巨体に向かって念じると、持ってきていた瓢箪のような入れ物に魂だけを固く封印した。亡骸をそのままにして。
「これでいいか…」
 そのまま、青い閃光は何事もなかったかのようにレック達の前を通り過ぎていく。
 その場を静かに去っていったのだった。

「…まったく、無駄のない動きでしたね」
 アモスが感嘆の声をあげている。
「ほんと…すごかったねー!かっこよかったしー!」
 バーバラはテンション高く盛り上がっている。
「あんな若くて強いうえに、しかもあの顔だなんて反則だぜ」
 ハッサンが悔しそうな顔をしている。
「それにしても、これじゃあ雷鳴の剣はあの若者が持っていくことになりそうですね」
 チャモロが残念そうに言った。
「いいんじゃないか」と、どこかあっさりしているレック。
「彼にはきっと剣が必要なんだろう。名刀と呼ばれるあの剣がさ。それに、俺達の旅の目的は武器を探す事じゃないし」
「ま、それもそうだな…って、ミレーユどうしたんだ?」
 ハッサンが何もしゃべらずに固まっているミレーユに気づいた。
「……え、ああ…なんでも、ないわ」
 はっとして、すぐにいつものように振舞う。
「顔色…悪いようだけど」と、バーバラ。
「本当に大丈夫よ。少し、疲れただけだから」
 気のせいだろうか。
 ミレーユの瞳が少し涙ぐんでいるように見えた。あの宝石のような翡翠が。白すぎる顔色が余計に白すぎて見えて、ひどく憂いを帯びている。
 しかし、数秒経った今では、すっかり元の彼女にもどっていたのだった。


「魔物も退治されて、これで旅の洞窟も通れるようになるだろう。見事倒した青い閃光に、褒美として雷鳴の剣を与えた。そなたたちも頑張ったというのに、何も与えてあげられなくて申し訳ない」
 王がぺこりと謝罪した。
「いえ、いいんですよ。そういえば、あの青い閃光の名前はなんと言うんですか?」
 レックが何気なく訊ねた。
「ああ。テリーと申しておった。彼は世界一の剣を探しているそうだ」
「へぇ…世界一の剣ですか」
 また彼とはどこかで逢えるだろうと予感した。
 彼と自分達が世界中を旅する限り…きっと――……


「ついに明日は旅人の洞窟から新大陸ですね」
 野営時、料理当番のアモスがみんなに特製パエリアをふるまっていた。焚火をみんなで囲みながら夕食を頬張る。
「今度こそ、魔王の一人の手がかりが見つかればいいんですけど」
 チャモロが全員に美容によく効く茶を湯飲みに淹れている。
「何人その魔王がいるかにもよるけどねー」
「そん時は、俺様の正拳突きの出番だぜ」
 ハッサンが逞しい腹筋をどんと叩いた。
「今回は魔物の親玉と戦えずに消化不良でしたからね」
「あーそれにしても、また近いうちに逢えるといいなあ。あのテリーって人と…。かっこよかったなぁ…」
 バーバラが遠い空を眺めながら言った。
「また…きっと…あえるわ。絶対に…」
「ミレーユ?」
「…そんな気がするのよ…私も」
 彼女はどこか遠い場所を見つめていた。



十二章 完





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