DQ6 | ナノ
 21-6

「…あれ…」
 剣に触れて持ち上げてから、突然視界が真っ白になった。しかも、自分と剣以外は誰もいない空間にひとりで漂っている。
『…勇者よ…よく私を目覚めさせてくれた…』
 まっさらな空間の中で聞こえてくるこの声には覚えがあった。
 あのムドーとの戦いで、自分を勇者に目覚めさせてくれた者の声だ。
「…あなたは…暁の御子!」
 レックは思い出した。
『子孫よ…その暁の御子の名称は、今度こそお前に継承させよう。私はラミアス…』
「ラミアス…!あなたは先代のレイドック王ラミアス…。そして…俺の前世」
 先代の王の本当の名前は知らないのに、脳裏に名前が浮かんだ。そして、彼が自分の前世である事も。
 いつも妙な懐かしさを感じるのもそのせいだった。
『…その剣は私の意思と魂が宿る。どうかその剣をうまく使いこなし、魔を祓い、邪を浄化せよ…。そして、今度こそ…邪悪なる者の野望を打ち砕け…我が生まれ変わり勇者レックよ…』
 光がほとばしり、気が付けば視界はもとの現実に戻っていた。
「あ…今のは…一体。この剣が導いてくれたのか…」
 レックは瞬きをして目を擦った。
「おや、あんたきてたのか」
 サリイがいつの間にか目を覚ましていた。
「ありがとうサリイ。これすごい剣だよ!握っただけで力がみなぎってきてさ…君のおかげだ!」
 喜ぶレックにサリイは淡々と目を伏せる。
「ふ、お礼を言うのは魔王を倒してからにしとくれ。その剣でさ。そしたら、あたいの力も、世の中の役に立ったんだなって誇らしく思えるんだ」
「…そうだな。じゃあ、この剣はいただいていくよ。えーと料金は…」
 懐から薄っぺらい財布を取り出す。
「金なんていらないさ。いい経験させてもらったしな。金なんかで買えるくらいの腕前してないし。それで絶対魔王を倒せよ?」
「ああ、必ず!」
 力強く返すと、サリイは満面の笑みを見せたのだった。



二十一章 完

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