届かないから奪いたい。

今日は休日。
部活もなければこれといって用事もない。
だから緑間は街へ出掛けることにした。
思えばここのところ勉強と部活とでゆとりというものがほとんどなかったし、なによりラッキーアイテムの候補探しにちょうど良い。
たまにはこういう時間の過ごし方も悪くはないだろう。

休日の繁華街は一体どこからこんなに人が集まってくるのだろうかと鬱陶しくなるくらい、人でごった返していた。
ベビーカーを押す親子連れや、手を繋いで歩くカップル。
実に多種多様な人々の群れに眉をひそめていると、ふと見知った人影が視界を横切った。
緑間は目を見張る。
間違えるはずがない。
あれは――

「・・・黒子」

やたらと影が薄いことがある意味特技の黒子を見失わないよう追いかける。
人ごみをかきわけ、長身を活かして後を追う。
人の間を縫って、少し人気の少ないところまで来てようやく追いつくことができた。

「黒子」
がしっと腕を掴んで呼び止めると、黒子はびっくりしたように緑間を見上げた。
「緑間くん・・・」
「こんなところでなにをしているのだよ」
「緑間くんこそ。声を掛けてくれるなんて珍しいですね」
高校へ進学してからというもの、黒子と会う機会はほとんど減ってしまったが、相変わらずのこぼれ落ちそうなくらい大きな目は健在だった。

「ふんっ・・・たまたま見かけて気になっただけなのだよ」
「気にしてくれたんですね」
どこか嬉しそうに黒子が微笑む。
思わずどきっとしてしまい、動揺を悟られないようわざと眼鏡を上げ視線を逸らして誤魔化す。

「それで、一体ここでなにをしていたのだよ?」
「火神くんと買い物にきたんですけど。途中で見失ってしまって・・・」
「火神と?」

緑間の眉間にシワが寄る。
「つまりデートということか?」
「へ!?べ、べつにそういうわけじゃあ・・・」

腕を握る手に力が入ってしまい、黒子が顔を歪めた。
「あの、緑間くん・・・痛いです・・・離してくれませんか?」
「離したら火神のところへ行くつもりだろう?」

そんなことはさせない。

「ついてこい」
「え、あ・・・ちょっと・・・」
黒子の腕を無理矢理引いて連れ帰る。
大股でズカズカと歩く緑間に、黒子はこれと言って何も言わずについて行った。


街から離れた住宅街へ足を踏み入れると、さすがに不安そうに黒子が緑間を見上げた。
「あの、緑間くん・・・」
「・・・・・・」
逃げるにもしっかりと腕を掴まれてしまっているためどうにもできない。
やがて辿りついたのは見覚えのある住宅。
緑間の家だった。

緑間が鍵を開けて扉を開く。
家のなかは真っ暗で、どうやら誰もいないようだった。

「緑間くん・・・一体なん――んうっ!?」
扉が締まると同時に、緑間は黒子の背を扉へ叩きつけ強引に唇を奪う。
「んん・・・ふ・・・っ」
息苦しさに、動ける方の手で黒子は緑間の胸板を叩いた。
その手を掴み、黒子の両手を緑間が片手で頭上へとまとめ上げる。

「っ・・・緑間くん・・・」
唇を離し黒子を見下ろす。
酸素不足のせいか潤んだ目が余計に愛らしい。

「火神とはもうしたのか?」
「なっ!?なにを言って・・・」
黒子の顔が真っ赤に染まる。
なるほど。そういうことか。

「答えるつもりがないのなら、体に聞いてみるだけなのだよ」
色気ある緑間の低音が耳元で囁かれる。
「んっ」
ぴくっと黒子が小さく体を震わした。
怯えるような仕草が可愛くてもっと見たくて、緑間はそのまま黒子の耳孔へと舌を差し入れる。

「あっ・・・いや・・・」
ぴちゃっ、という濡れた音が耳の中に直に響く。
黒子の背筋をぞくぞくが伝った。
じれったく舐め上げ、耳殻を歯で引っ掻いてやると血が巡って真っ赤になる耳と頬。

もっと見たい。

緑間の手が黒子の服の下を探り始めた。
「っや―!み、緑間くん・・・やめてくださ・・・ぁっ」
胸の先にある小さな粒を探り当て押し潰す。
テーピングの布越しに伝わる乳首が凝る感触。
くりくりと弧を描くように捏ねまわす。

「火神にも触らせているのか?」
「・・・っ、火神くんとはしていません」
「嘘をつくつもりか?お前があいつと付き合っていることくらい俺にはお見通しなのだよ」
きゅっ、と少し強めに緑間が乳首を摘んでみせる。

「いっ・・・やだ、痛いです・・・」
「素直に認めたらどうだ?そうしたら悪いようにはしない」
「だ、だから違うって・・・」

涙が溜まった黒子の目。
苦痛と快楽は少し似たところがある。
黒子の顔はまさにそんな顔だ。
苦痛を与えられた時と快楽に溺れる時、人は似たような顔をする。

ふっ、と緑間が黒い笑みを漏らす。
すると身につけていたネクタイを引き抜き、黒子の両手首を縛り上げて拘束した。
「や、やだ・・・!緑間くん・・・こんなことしないでください・・・」
「認めないお前が悪いのだよ黒子」
頬へキスをし、再び口付ける。
両手が自由になった緑間は片手で黒子の顎を掴んで固定すると、自分の都合がいいように黒子の顔を動かして舌を絡める。
小さく薄い黒子の舌が無駄な抵抗と言わんばかりに逃げ回る。
が、すぐに捕まえて、ざらりと舌を擦り合わせる。
「んんっ、う」
くぐもった声がたまらない。
今度はテーピングをしていない方の手で黒子の胸を撫で回す。

「・・・いやっ・・・やめてください・・・やだっ、あぁ」
さらに黒子の脚を割ると、緑間は股間へ膝を押し付けた。
強弱を付けて押してやると、黒子がいやいやと首を振る。

「あ、や・・・やだぁ・・・」
服越しにも勃ち上がり始めているのが分かる。
あえてそこを直に手で弄らずに、緑間は両手で黒子の脇を掴むと、親指で尖った乳首をそれぞれ乱暴に転がした。
そして、ねっとりと首筋を舐め上げ性感帯を一気に刺激していく。
欲望が張り詰めてきて、黒子の膝が崩れ落ちそうになる。

しかし少しでも腰を落とせば中心を緑間の膝によって、ぐりっと刺激することになる。
堪えるように捩れた黒子の胸が反れる。
いつの間にか捲くり上げられたシャツからツンッと尖った乳首が露になった。

「み、緑間くん・・・」
泣きそうな声で黒子が訴える。
答えるつもりで緑間が「どうした?」と息を吹きかけながら耳へ問い掛ける。
「んっ!あ、あの・・・」
恥ずかしそうに目を伏せる黒子。
言いたいことは大体わかる。
だからちょっとした意地悪をしたくなるのだ。

無言になった黒子を誘導するように、緑間がその箇所を膝でぐりぐりと刺激してやる。
「あぅっ――や、やあぁ・・・」
声を上げる黒子の口の中を唾液の糸が引いた。
それがなんとも卑猥で、色っぽくて可愛い。
黒子の腰を抱くと膝へ乗せるようにして促す。

「言いたいことがあるのなら早く言えばいいのだよ。ほら」
「や、あ・・・んっ。み、みどりまく・・・さわって・・・くだ・・・」
「なんだって?」
「ちゃ・・・と、さわって・・・くださ・・・」
ふるふると震える黒子の唇を塞ぐと、緑間が性急に舌を吸い上げた。

「んんうっ・・・ぅ・・・んっ――んん!」
びくびくと震えながら呆気なく黒子は達してしまった。
服を着たままだったため、下着の中がぐっしょりと濡れていく。
あまりの羞恥に黒子の目から涙が零れ落ちる。

唇を解放して涙を舐め取ってやると、緑間は黒子の下を脱がしはじめる。
そうしてテーピングを解きはじめるのを見て、黒子はぎょっとしたように緑間を見る。

「あ、あの・・・ここでするんですか?」
なんてったってここは玄関である。
靴を履いたまま、ましてや内側から鍵だって締めていない。
もし仮に家の人が帰ってきて扉が開かれようものなら、こんなみっともない姿を晒すことになってしまう。
そんな黒子の不安をよそに、余裕げに吐き捨てる緑間。
「別に問題ないだろう」

緑間が手を伸ばし、黒子の脚の間に付着したぬめりを入口へと擦りつける。
ぬるぬると指が滑り突き入れられる。
「ん」
黒子の反応にはおかまいなしに、確認するように中をぐるりと掻き回す。
指を二本挿入して出し入れを繰り返すと中の粘膜が次第に収縮をはじめた。

前を直接触ってもらえなかったせいで、黒子の中が余計にきゅんきゅん疼いている。
早く欲しいと、自分の意思とは関係なく体が求めているようだった。

「もういいだろう」
呟いた緑間が柔らかな黒子の双丘を鷲掴んで開くと、緩んだそこへ屹立を穿つ。
「あぁ――!やっ・・・」
立ったまま両腕を拘束されるという強引極まりない手法で犯されて、黒子の口から悲鳴に似た声が漏れる。
さらに深く突くために、緑間は黒子の脚を抱えると黒子の体重を後ろの扉へ預ける形で宙へ浮かせて、欲望を一気に奥まで貫いた。

「や、や・・・いやぁ!はうっ」
せめて緑間の首へ腕をまわしてしがみつきたいけれどできない。
ぼろぼろと涙を零す黒子の顔へ、キスをしながら緑間が中を犯していく。
体が密着しているせいで、緑間の腹部へ育ち始めた黒子の幹が擦りつけられる。
服が汚れるとかそんなことは関係なかった。
ただこの体を、俺という男の手で快楽へと突き落としたい。

「あっ、あ・・・あ――み、みどりまく・・・んあぁッ」
「ッ・・・黒子」

黒子の中が痙攣したように痺れ緑間を締め付ける。
途端に白濁を吐き出して、黒子は緑間の腹部を濡らした。
ほぼ同時に緑間も黒子の中へ欲を注ぎ込む。
やがて痺れが途絶えると、緑間は黒子の中から萎えた自身を引き抜いた。

くったりとした黒子の体。
どうやら意識を飛ばしてしまったようだ。
呼吸があるから大丈夫だろう。

その体を抱きかかえて風呂場へと運ぶ。

黒子が好きだ。
その気持ちは中学時代から変わらない。
まさかこの俺がここまで誰かに溺れてしまうなんて考えもしなかったけれど。

この体は俺だけのもの。
他の奴の手で汚れるなんてこと、そんなことは絶対にありえない。

「・・・愛してるのだよ。黒子」

その告白がお前の耳に届くことがないと分かっていても。
それでもお前が愛おしくてたまらない。

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