今宵は君のためだけに。

青峰くんが誕生日ということで。
「まだプレゼントの用意ができていないんですよね」
練習中のこと。
ぽつりと呟いたら、近くにいた黄瀬くんにそれを拾われてしまった。
「プレゼントって・・・青峰っちのっスか?」
「はい」
「今日が誕生日なのに?」
こくりと小さく頷くと、黄瀬くんは爽やかに笑ってみせた。
「大丈夫っスよ。青峰っちのことだから、きっと黒子っちからの贈り物だったら何でも喜んでくれると思うっスけど」
「そうだといいんですけど。本当に何をあげたら良いのかさっぱりで・・・」
「そんなの簡単スよ!」
がっしと首に腕を絡められて、引き寄せられて囁かれる。
「『ボクをもらってください』って、色仕掛けしちゃえばいいんス♪」
「色仕掛け・・・」
黄瀬くんの言ったことをなんとなく繰り返してみたけれど。
その単語の意味をよくよく理解してみた途端、ボンッと顔から火が吹いた。
「き、黄瀬くん・・・!そんなこと・・・」
「あ。黒子っちでもそんな顔するんスねぇ」
面白そうににやにや笑う黄瀬くんから逃れようとじたばたしてみるも、しっかりと捕らえられてしまって動けない。
「苦しいです・・・」
ぱっと顔を上げてみて、目の前にいた人物と目が合うと顔面蒼白した。
「テツ、楽しそうだな」
「・・・青峰くん」
青峰くんは冷ややかにボクを見下ろすと、次は鋭い目で黄瀬くんを睨みつけた。
すぐに黄瀬くんは「やばい」と言って体を離した。
両手を肩の位置に上げて、後ろへ下がる黄瀬くん。
そんな黄瀬くんの行動を見届けてから、青峰くんはボクの手を握った。
ぐいっと引っ張られて肩を抱かれる。
くるりっと背を向けると、そのまま歩き出した。


「あ、あの・・・青峰くん?」
「あー?」
声の調子からして青峰は機嫌を損ねているようだった。
多分きっとそれは、黒子と黄瀬が仲良くしていたせい。
怒った青峰は黒子を体育館の外に連れ出した。
黒子としては練習をサボることは気が引けたが、それよりも青峰はグレると厄介だ。
少しくらいなら席を外してもたいして問題ないだろう。
「テツ」
「なんでしょう?」
「今日はもう帰んぞ」
「え」
これは想定外だった。
「帰るって・・・?」
黒子が立ち止まっても、腕をぐいぐい引かれてしまい青峰は止まらない。
「待ってください青峰くん・・・!」
踏みとどまって力を込めて、ようやく青峰は立ち止まって振り返ってくれた。
「んだよ」
「言いたいことがあるなら後でちゃんと聞いてあげますから。練習には出ましょう」
頑として譲る気のない黒子の真っ直ぐな眼差しを見下ろして、青峰は呆れ顔で溜息を吐いた。
「・・・わーったよ」
そして黒子の腕を振り解いた。

それから練習が終わるまで、青峰は誰とも口を聞かなかった。

練習を終えて、ロッカールームで着替えを済ませると青峰はそそくさと帰り支度を終えてロッカールームを後にしてしまった。
急いで黒子も着替えると、すぐに青峰の後を追った。
「青峰くん・・・!」
「・・・・・・」
「待ってください青峰くん!」
「・・・・・・」
「青峰く――」
くるっと振り向いた青峰に手首を引かれてそのまま廊下の影に引きずり込まれるようにして、黒子は壁に背中を叩きつけられた。
鈍い痛みに「うっ」と小さく呻くと、顎を乱暴に持ち上げられて唇を塞がれた。
「っ、んぅっ」
ただ唇を合わせただけですぐに青峰は離れた。
至近距離で見詰め合うと、青峰は黒子の肩に額をこつんとぶつけて頭を預けた。
「・・・テツ」
「なんですか?」
「お前はオレのことなんかどうでもいいのか?」
「そんなことないですけど・・・」
「じゃあどうして黄瀬には平気でベタベタさせて、オレには断るんだ?」
「だって青峰くんのは黄瀬くんとは違うじゃないですか」
顔を上げた青峰が、ハッと鼻で嘲笑う。
「黄瀬の味方すんのか?」
「ちがいます!」
「ま、どーせテツはオレの誕生日に何もくれないような薄情な恋人だったっつーことだよなぁ」
「そんなこと・・・」
ちがう、と否定しようとして間違ってはいないことに気が付く。
青峰の誕生日は素直に嬉しいと思うし祝福してやりたいと思っている。
けれど、そう思えば思うほど、どうやったら青峰に喜んでもらえるか分からなくなってしまったのだ。

『ボクをもらってください』

ふいに黄瀬から言われたことを思い出した。
「・・・あります、プレゼント」
「なんだよ?」
「ついてきてください」


そうしてそのまま青峰を自宅まで招くことになってしまった。
「あっちいから喉乾いたな・・・。テツ、なんか飲み物――」
先に部屋に通された青峰が、扉の前に立ったままだった黒子を振り向いて絶句する。
何故なら黒子は何も喋らずにただ黙々と服を脱ぎ始めたからだ。
「ばっ!なにしてんだよ!?」
「なにって・・・」
ネクタイを解いて、シャツのボタンを半分まで外し終えると黒子は頬を染めて俯いた。
「プレゼントです、けど」
「はあ?」
「青峰くんへのプレゼントです。受け取ってくれますか?」
うるうると大きな目を潤ませる黒子。
その可愛さに青峰は心臓を打ち抜かれてしまった。
「な、なんだよ・・・プレゼントって・・・?」
「青峰くんはそこに座っていてください」
指示された通り、青峰は床にあぐらをかいて座った。
その目の前で、黒子は衣服を一枚一枚脱いでいく。
青峰に見られながらというのは恥ずかしいけれど構わない。
シャツを脱ぎ捨てて、ズボンと下着を一緒に押し下げて足を抜くと靴下を剥ぎ取って裸になった。
「テツ、まさか・・・」
「プレゼントはボクです」
思わぬサプライズに青峰は目を見開いた。
「ボクをもらってください」
果たして、これで青峰は喜んでくれるのだろうか。
不安な気持ちで一杯になりながらも、黒子は青峰を黙ってじっと見下ろした。
しかし、返ってきたのは見当はずれな返答。

「・・・らしくねーことしてんなよ」
「え?」
「どーせ黄瀬にでもそそのかされたんだろ?じゃねーとお前がそんなことするわけねーもんな」
「そんな・・・」
せっかく思い切って事に及んでみたのに。
またも青峰の機嫌を損ねてしまったようだった。
俯いたまま、黒子は唇を噛み締めた。
「ま、それでもテツがオレを祝いたいって気持ち、充分わかったわ」
よいしょ、と青峰が立ち上がる。
「お前から言い出したんだからな。最後までちゃんとご奉仕してもらうぜ?」
にやりと口角を上げて、青峰は黒子の耳にかぶりついた。
「んっ」
かぷっと噛み付いて、舌でねっとり舐め上げると耳たぶを吸って離れる。
そのまま耳から首筋のラインを鎖骨に向かって味わうように舐めていき、鎖骨を軽く食んでから、胸の先にあった淡い色をした突起を唇で挟んだ。
「ぃあっ」
ちゅうちゅうと吸い付いてから、反対側の乳首を抓り上げて転がす。
「あ、青峰く・・・、んんっ」
同時にまだ何の兆しも見せていなかった中心を手の平で擦り上げられてしまうと、黒子は腰がふるりと震えた。
「やっ、あ・・・ん」
男らしい不格好な形をした青峰の手が、大事な部分を擦り上げる。
胸に顔を埋めたまま、チュパチュパと音を立てて未だに乳首を吸ったり食んだりしている。
「・・・テツ、濡れてきた」
「っ!?」
「ぬちぬち言ってるぜ?」
薄皮を捲くられて、剥き出しになった先端の窪んだところを指の先でくすぐられれば、先走りが粘ついた音を立てた。
「言わないで、ください・・・」
「言われると興奮すんだろ?」
それは青峰くんの方じゃないですか?と言いたくなったが黒子は口を噤んだ。
青峰はえっちな本を読むのが好きだから、そういうふうに実況するとエロ本みたいでそそると前に言っていたのを思い出した。
けれど、今それを言ったら過激なプレイを要求しかねない予感がしたから黒子は言葉を飲み込んだ。
目を瞑って、なんとかやり過ごそうとするも、勃ち上がりはじめてしまった自身を口に含まれてしまった。
「ひゃっ!」
ねっとりとした生あたたかい口内に包まれて、黒子は腰が抜け落ちてしまいそうだった。
「あ、あぅ・・・あっ、あ・・・」
しっかりと黒子の腰を支えながら、青峰は的確な口淫を繰り返す。
「・・・テツ」
「な、んですか・・・?」
「がまんできねぇ」
ぐいっと体を引き寄せられると、視界がぐるりと反転する。
床に押し倒された黒子が、不安そうな顔で青峰を見詰める。
「ローションどこだ?」
「あ、えと・・・そこです」
いつも青峰とする時に使うものは、たいてい引き出しの一番下の奥にしまってあった。
指し示すと、青峰は手を伸ばして手際よく目当てのものを引っ張り出してきた。
ぬるぬるした液体を脚の間に垂らして、そのぬめりをついでに中心にも塗りつけて弄んでから入口を解していく。
指が二本突き入れられて、入口の粘膜が引き攣るように痛んで黒子は眉根を寄せた。
「はっ、やべぇテツ・・・その顔えろすぎ」
青峰も一杯一杯で、それでも黒子にもちゃんと快楽を与えてくれる。
体の内側をごりごりと解しながら、黒子の腰を高く持ち上げて、硬く聳えてしまった幹を再び口に咥えこんだ。
「や!やぁ・・・、あっ」
すごい体勢をとらされてしまったことと、行為の猥褻さに黒子は思考が麻痺してきた。
「あ、おみねく・・・だめです。でちゃう・・・ッ」
告げた途端に奥を押されて、黒子は青峰の口の中で達してしまった。
ごくりと喉を鳴らして青峰が笑う。
「ごちそーさん」
ぺろっと舌舐めずりされると、普段とは違った妙な色気に再び体が熱くなる。
「あおみねくん・・・」
「ん?」
「早くもらってください・・・。ボクを早く・・・」
腰を振って催促すれば、青峰の指が体の中で生き物みたいに激しく動き回る。
「いいんだな?テツ」
「・・・はい」
指を抜いた青峰が、取り出した自身の昂りを扱き出す。

「入れるぞ」
言葉と同時に熱くて硬い塊が体を犯す。
「あっ、あぁ・・・うっぁ・・・!」
苦しくて歪む黒子の顔にたくさんのキスを降らして、青峰が唇を啄んで口付ける。
「んふっ、ふ・・・ぅん」
口付けが深くなるにつれ、繋がりも深くなっていく。
「はっ、あ・・・あおみねくん」
黒子が青峰の首に腕を絡めて抱き着いた。
「あおみねくん・・・誕生日おめでとうございます・・・」
「・・・どういたしまして」
「あおみねくんが、生まれてきてくれて・・・ボクはすごく嬉しいです・・・」
「なにをいまさら」
「好きです」

そうしてまたキスをする。
離れると、青峰が耳元で囁いた。

「こちらこそありがとな。最高のプレゼント、最後まで堪能させてもらうぜ」

今年の夏はとても暑い。
いつか昔の夏の日の今日に。
君が生まれてきてくれて、ありがとう。

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