サスケ出生、イタチ下忍になる話
2度目の出産は予定日より少し早く陣痛が来て不安ではあったけど、フガクさんとイタチに支えられながらなんとか安産で第二子を生むことが出来た。
生れたのは元気な男の子で、イタチは弟が出来たことに大変喜んでいる様子だ。「一緒に修行するんだ!」って普段はあまり見せない満面の笑みを零していた。その姿があまりにも愛しくて、看護師さんの前だったけども我慢できず両腕でぎゅうぎゅうと抱きしめてしまった。ああ、赤ちゃんを抱いているフガクさんが呆れた表情をしている。このなんとも言えない空気は私のせいなのでしょうか。少し気まずさを感じながらイタチを解放し、こほんと一つ咳ばらいをした。

「フガクさん、赤ちゃんの名前は決まりました?」
「ああ、この子の名前は……サスケ。サスケだ」
「サスケ……素敵な名前」

サスケ、その名前を何度か口の中で転がす。強くて、凛々しくて、それでいて優しい響き。イタチと同じような輝きのある名前。イタチも「サスケ……サスケ」と確かめるように何度も弟の名を呼ぶと、フガクさんの腕の中にいる赤ちゃん……サスケの紅葉のような手に触れた。

「サスケはお兄ちゃんが絶対守るからな」
力強く決意するようにそう言ったイタチに「ああ、子供の成長は早いな」なんて思った。だって、つい最近までは私の腕の中で眠っていたような子がこんなにもしっかりとしたお兄ちゃんになっているんだもん。でもあなたもまだまだ子供なんだから、もっと頼ってほしい気持ちもあるの。

「じゃあイタチのことは母さんが守るからね」

そっと優しく頭を撫でながら言うと、少し照れたようにイタチが笑った。もちろん抱きしめましたとも。フガクさんの呆れたように吐かれた大きなため息はこの際聞こえなかったことにした。


***



「かあさん!」
「はーい」

ぽてぽてと覚束ない足取りで少し離れた所から歩いてくる息子。持っていた包丁を少し遠くへ置き、しゃがみこんで到着を待つ。腕を広げてみれば、満面の笑顔でぎゅうと小さな力で抱き着いてきた。

「かあさん、つかまえた!」
「えへへ、つかまっちゃったあ」

一言で報告するのであれば、うちのサスケ君は天使に育ちました。我が家の第二の天使です。
第一天使のイタチは去年アカデミーに入学して、僅か一年しか経っていないのに今年卒業した。教師曰く「あの子には教えることはもうありません」らしい。
正直私は納得することが出来なかった。確かに親の目から見てもイタチは忍の才能に恵まれ、同世代の中でも群を抜いて技術がある。それは分かるんだけど……学校で学ぶのはそれだけじゃないと思うの。同世代の子と沢山お話しして、お友達を作って、年相応に公園で遊ぶ。その経験をしないで社会に飛び出さなければならないイタチはどんな気持ちだろうか。そう考えただけでいてもたってもいられなくてフガクさんに猛抗議を行った。
だけど「これは名誉のあることだ」と言われ、それ以上は口論のしようがなく終わる。

「いいんだ、母さん。俺、頑張るよ」

そう私を諭すように微笑んだイタチに、ただ抱きしめてやることしか出来なかった。




「かあさん?」
「!ああ、ごめんねサスケ…さ、もうすぐで兄さんも返ってくる時間だからサスケ君に任務を与えます!」
「にんむ!」

任務、と聞くと途端にわくわくした表情になる。サスケは憧れの兄さんと同じことをするのが大好きなのです。下忍となったイタチがいつも「任務」を頑張っていることを幼いながらに理解してるので、任務といってお願いごとをするととてもうれしそうにする。イタチもイタチで帰ってきたらサスケを構ってあげているし、兄弟の仲が良いことは母としてはとても嬉しい限りです。
早く早く、と言わんばかりに輝く瞳を向けてくるサスケに笑みを零して今日の任務を告げた。

「兄さんが帰ってきたらいっぱいいっぱいぎゅーってしてお帰りって言ってあげるのです!苦しいっていっても離しちゃだめよ!」
「わかった!おれがんばる!」
「よおし!いい子いい子!」

たった一人で年上の人たちとスリーマンセルを組んだいるイタチはさみしい思いをしているのかもしれない。本当は同世代の子たちと沢山学んで、遊んで、泥だらけになりながらも笑って過ごしたかったのかもしれない。だから、その寂しさを埋めるように私達の愛でいっぱいにしてあげたい。

「あ、噂をすれば」
「にいさんかえってきた!」

玄関の方から扉が開く音の後に「ただいま」と凛とした声が聞こえてくる。サスケはイタチの声が聞こえた途端小さな足取りで走り出した。よし、私も負けてられないよ。

「にいさんおかえり!」
「イタチおかえり!」
「うわっ」

姿を現した母と弟が突然抱き着いてくるもんだからイタチは動揺しているみたい。「く、苦しいよ、母さん、サスケ」という訴えはもちろん聞き入れることはなかった。

「今日はぎゅーの刑です!」
「ぎゅー!」
「な、なんで?それに俺泥だらけだよ。母さんたちが汚れちゃう」
「関係ないよ。イタチが頑張った証拠だもの」

そう伝えると息を詰まらせた。

「お疲れさま、イタチ。よく頑張りました」
「…ありがとう、」

きゅっとつかまれたエプロンに土埃がつく。その汚れがとても嬉しくて、愛しくて。さらに腕の力をきつくした。



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