1章 砕かれた日常



日もすっかり暮れた頃。


クロム達一行は森の中を歩いていた。


「やっぱり夜になっちゃった……うう、ちっちゃい虫が飛んでて気持ち悪….…ひあっ!くひにはひっは!」


どうやらリズの口の中に虫が入ったようでリズが謎の奇声を上げていた。


「ははは、大丈夫か?」


笑ながらその光景を見るクロム。


「けほっ、けほっ!
……んもう、町に泊まりたかったよ!
あったかいご飯にふかふかのベッドで寝たいよお!」

リズが文句を言っている。

仕方ない、リズはか弱い女の子なのだから。

いや、それを言うなら自分も、なのか?

ルフレは1人考えていた。



不意に、空腹を告げる音が鳴った。



「何か食べ物はないですか?
空腹で死にそうです…」


「では、野営準備と食料調達に別れましょうか。」

フレデリクの一言により、私達4人は2手に別れる事にした。












ぱちぱちと音を立てて爆ぜる火を取り囲み、先程狩って来た熊を豪快にぶつ切りにし、火にかけた。


因みにこの熊はクロムが狩って来たのだ。



「…熊は久しぶりだが、美味いものだな。」


「硬いよ、獣臭いよ……女の子の食事じゃないよ……」


何でこんなの狩って来たのとリズはふてくされていた。


「こんなの食べれないよね、ルフレさん?」


「むぐ、もぐ…ごくん、はい、なんでしょうか?あ、熊ですか?美味しいですね。」


「ルフレさん………」


そんなに食べて、よっぽどお腹が空いていたんだね…


そういえば、とリズがフレデリクに尋ねた。


「フレデリクは食べないの?」


「ふふっ、私の事は構わず。
…….さあ、そろそろ休みましょうか。」

「もーっ!ごまかしたぁ!」


あの爽やかスマイルにごまかされてしまい、腑に落ちないがリズは眠る事にした。








眠り始めてからしばらくの事。


「…………?」


いつもと違う異変に気付いたクロムは目を覚ました。



その音につられリズも目を覚ます。



「どうかしたの……?」


「様子が変だ、ちょっと周りを見てくる。」


「1人じゃダメ!私も行く!」


「分かった。じゃあ頼む。」


2人で森の奥へと足を踏み入れた。







「虫の声もしないし鳥も動物も居ない……」

「何か…おかしいな。」


と、その時。



ズゴゴゴゴゴゴゴ



地面から地響きがし、地割れが始まった。



「リズ……走れ。」

クロムはリズを軽く押し、走らせた。



そして開けた平原にでた時。



「!お兄ちゃん、あれ!」

リズの指差す先には空の上に不思議な空間があった。

そしてそこから……


「オオオオオオオオ……」

と、紫色の肌に赤く光る目を持つ戦士が落ちて来た。


それらはクロム達に襲いかかる。


「くっ…はあっ!」


クロムが一体の兵と対峙し、切り捨てると兵士は紫色の身体を消失させた。


「何だこいつらは……」


と、その時。


「きゃぁぁぁぁああっ!」


リズの元にもう一体兵士が現れリズに襲いかかる。


「リズ!」


その時、また空中から、今度は全身を青に包んだ謎の仮面を付けた騎士が現れた。


彼はリズに襲いかかる敵を斬り伏せた。


「あ、貴方は──────」

「リズ様!」


そこへ、遅れてフレデリクとルフレがやって来た。


「大丈夫ですか?」

「うん。さっきこの人が……あれ?居ない……」

「まあ、細かい事は後にして、今は目の前の的に集中してください。」


フレデリクがそう言うと皆戦闘体制に入った。


「あ、あそこにあるのは….砦ですね。
身を守るのには最適です。有効活用しましょう。

クロムさん、あちらの砦におねがいします。私はこちらの砦に入って戦いますから。」

「分かった。」

クロムとルフレはそれぞれ砦に立って敵との攻防を繰り広げた。
フレデリクとリズはいつでもどちらにも回復しに行けるようにダブルで中立になった。


そしてしばらくして。


「あ、いたいた、クロム団長!
ボクも参加しないと。」


赤い髪をベリーショートにした男性のような女性が馬を走らせてやって来た。

そこに、

「待ちたまえ、きみ。」

「?」

「早々急ぐものではないだろう?」

「何なんだ、ボクは急いでいるんだ!」

水色の髪の毛を優雅にはらい、男がやって来た。

掴みどころの無い様子だが、動作の一つ一つに気品がある。




「待ってくれよ!本当は1人で寂しいんだよ!
足でまといにはならないから連れて行ってくれ!」


先程の気品はどこへやら。

全くもって情けないではないか。

女性はため息をつくと馬にもう1人乗るスペースをつくり、


「仕方ないヤツだなぁ、ほら、乗りなよ。」


と、飽きれたように手を差し出した。



「ありがとう、将来の我が妻よ…」



そう言って青年は女性の手を借りて馬に跨った。



2人も乗せて戦えるのか、と思いきや。


「華麗に助太刀させてもらうよ、救ってくれた礼だと思ってくれ。」


そう言って青年は流れるような動作で敵に弓を打ち込んだ。


本当にどれが本物の彼なのか分からない人間だ。




しばらくして、少し大きな体格の兵が現れた。



「クロムさんっ!何だか隊長格の様なのが現れましたよ!」



「分かった、アレは俺が斬る。」


クロムが一対一で対峙している。



私は周りの敵を倒していく事にした。


彼女らも同じように周りの敵を倒してくれている。




「俺が相手だ、かかって来い!」

「オオオオオオオオァァァ!」


激しい打ち合いが続く。



斬られては斬り返しの凄まじい攻防がいく度か続いた後。



「俺は負けん!」



我らが大将、クロムに軍配が上がった。





「…さっきは助けてくれてありがとう。」

「俺からも礼を言わせてくれ、ありがとう。」

「……礼には及ばない。無事で何よりだ。」


そう言って仮面の騎士は去ろうとした。


「待ってくれ。

…お前の名前はなんだ?」



「僕の名前は……マルスだ。」


マルスと名乗った彼は何処かへと去ってしまった。


「いっちゃったね……」


リズはマルスが歩いて行った方向を見つめていた。


この時の彼らは知る由も無かった。


後にマルスが、物語に深く関わってくる事に………



  
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