▼ メヌエット、美しい君へ
戦乱の最中ではあるが、仲間の誕生日位は皆で祝ってはしゃぎたいものだ。ましてや今日はリズの誕生日。軍のみんなも意気揚々と準備に勤しんでいた。
「うふふっ、皆がお祝いの準備をしてくれるのが凄く嬉しくて、どんなパーティーになるのか凄く楽しみだなぁ!」
出会うたび、仲間達が口々におめでとうと声をかけてくれる。リズはとても嬉しそうに天幕の周りを歩きながら、近くの花畑へと足を運んだ。
「これをこうして……懐かしいな」
昔、まだ戦乱の起こる前、エメリナも生きていて、まだリズが小さかった頃、リズの誕生日にエメリナとクロムとリズの3人で花畑に行ったことがあった。
エメリナが教えてくれた花冠の作り方を真似て、兄と2人どっちが上手く作れるかなんて競い合いながら、楽しく笑いあった、懐かしい記憶。
「お姉ちゃん……」
思い出し、じわりと涙が浮かぶ。今日は誕生日なのに。ぶんぶんと頭を振って涙を引かせる。
ぽふん!と花畑に寝転がれば、リズの視界一面に空色が目に飛び込んでくる。眩しい太陽の光が差し込み、目を細める。ふと思い出したのは、彼の姿。
(今日は一回も会えてないなぁ)
いつも穏やかに笑ってる、優しい彼。初恋のフレデリクに失恋をして、悲しみにくれていた時にずっと側で話を聞いてくれた。思えばその時から既に、新しいこの恋は始まっていたのかもしれない。
「ソール……」
ぽつりと彼の名前を呼ぶ。太陽、という意味を持つその名前は彼にふさわしいと思った。暖かな春の日差しのよう。ちょうどリズが生まれた、この時期の──
***
「ん……」
目を開ければ、空の色はオレンジに変わっていた。いつの間にか眠っていたらしい。
「目が覚めたかい?」
頭上から降ってくる優しい声に目を向ければ、リズが会いたいと思っていた姿が。
さらに覚醒した頭でようやく気がついたが、どうやらリズは途中から彼の膝の上で眠っていたようだ。
「あれ、ソール!?いつの間に…あっ、えっと、膝枕、ありがとう…」
「はは、どういたしまして。屍兵を倒して戻って来たんだけど、リズの姿が見当たらなかったから探してたんだ。そしたらここで大の字になって寝ていたのを見かけてさ。」
「そ、そうだったんだ……」
もう少し起きていれば、そのうちソールがここに来て、もっと話せる時間があったのかと思うと眠ってしまった自分を恨みたくなるが、膝枕をしてもらえたことが嬉しくて眠ってしまってよかったなどと思う自分もいて。
「懐かしいものを作ってたんだね?」
リズが手に握ったままだった花冠を指してソールが言った。リズはぴょこんと起き上がると、その花冠をソールの頭の上に乗せた。
「えへへっ、花畑を見て昔のことを思い出しちゃって…作ってみたんだ…それあげる!」
「ありがとう…プレゼント渡す前に先にプレゼントもらっちゃったね。」
くすりと微笑みながらそう言われて、いいのいいのと自慢げに笑う。
「そろそろ準備も終わる頃だし、行かないとね。でもその前に…君に渡したいものがあるんだ」
少し照れ臭そうに笑うソール。鼻を触りながら、リズの方を見ている。その癖のことをリズは知らないため、単に首を傾げるだけだった。
「これなんだけど……」
そう言って差し出されたのは小さなリングケースに入った……綺麗な装飾の入った指輪。
「えっ……これってもしかして…」
「……僕、リズのことが好きなんだ。でも、リズは王女だからそんな事軽々しく口に出すもんじゃないと思って…でも、もう抑えきれなくなっちゃったんだ。リズさえよければ…僕と結婚してくれないかな」
突然の告白にリズは驚いて、顔が真っ赤になった。夕日がより一層リズの頬を赤く染める。
「う……うん…いいよ…私も、ずっと前からソールの事が好きだったから…」
「本当に!?良かった……」
「ねぇ、指輪……はめてもいい?」
「うん……じゃあ、僕が君の指にはめるよ。」
そう言って、ソールはリズの手を取り跪く。手の甲に軽くキスを落として、そっと薬指に、指輪をはめた。
「えへへ……嬉しいな……」
「僕も、とっても幸せだよ。」
2人で見つめ合って笑いながら、ゆっくりと口付けを交わす。そして、手をつなぎながら、パーティーの準備の終わった会場へと向かい始めた。
今日は忘れられない、最高の一日。
*****
リズちゃんお誕生日記念
二個目はソルリズ!
なぜこの組み合わせかというと、我が家の覚醒でリズが初めて結婚した時のお相手がソールでした。
というのも、フレデリクと結婚させようと思っていたものの、フレデリクとソールを間違えてリズの近くに配置した結果、2人の支援が発生したので「じゃあこの2人で結婚しちゃえ!」という勢いで結婚した2人です。クロムとルフレについで2番目に夫婦となりました。
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