追憶のカンタータ



今から3年前、リズの姉である聖王エメリナがこの世を去った。悲しみにくれ、しばらくは涙が止まらない日々を過ごしていた。

それから2年の月日が経ち、今度はリズの大事な友達であり、義姉である、聖王の軍師ルフレが自らの命と引き換えにこの世界に平和をもたらした。リズは2度、大切な人を失った。


それでも明るい笑顔で元気いっぱいに振る舞う彼女に、多くの人々が希望を、癒しを見た。


***


世界に平和が訪れ、1年が過ぎようとしていたその日は、リズの誕生日であった。王族である彼女の誕生日にはイーリスの国を上げての盛大な聖誕祭が行われた。


彼女の笑みは人々を癒し、彼女の言動は人々を笑顔にさせる。イーリスの城下町はリズの誕生日を祝う者で溢れかえっていた。


「誕生日おめでとう、リズ」

「おめえとー!」


穏やかな表情を浮かべ、兄であるクロムがリズの元へとやってきた。彼の足元には小さなルキナがニコニコと笑いながらこちらをじいっと見つめて立っている。


「お兄ちゃん、ルキナ!2人ともありがとう!」


笑顔で2人からのプレゼントを受け取る。こうしてお祝いをしてもらえることはとても嬉しいことだ。


鼻唄を歌い、上機嫌で中庭の通路を歩くリズに、背後から誰かが声をかけた。


「随分と機嫌が良さそうですね、リズさん」


低い心地の良い声が耳に入る。それは大好きな大好きなあの人の声。


「フレデリク!」


振り返れば、リズの最愛の夫、フレデリクが穏やかな笑みを浮かべて立っていた。


「お誕生日おめでとうございます、リズさん。本日は私が腕によりをかけて美味しい料理をたくさん作らせていただきますから、たくさんお食べになって下さい。」


「ほんと!?ありがとう!」


目をキラキラと輝かせる。フレデリクの料理はリズが世界で一番大好きな食べ物。それがたくさん食べれるだなんて!


「それから……リズさん…いいえ……リズ。」


「あっ…なに?」


リズ、と呼ばれどきりと胸が鳴る。フレデリクはだんだんとこちらに歩み寄り、そしてリズの目の前までやってきた。


「私からもささやかではありますが、誕生日プレゼントを送りましょう。」


そういって、可愛らしい小さな包みをくれた。そっと中を開けば、綺麗な貝殻のイヤリング。


「わぁ、とっても可愛い…!」


「貴女にきっと似合うと思いますよ。」


「えへへ、ありがとうフレデリク!大好きだよ!」


そう言ってぎゅっと抱きつけば、あたたかな手が背中に回ってきて、ぐっと抱きしめ返された。


「私も、愛していますよ。」


耳をくすぐる低音に、リズは頬を染めながらそっとフレデリクの頬に口づけを落とした。


***


2人が見つめ合って微笑んでいると


「今でもお二方は幸せそうなのですね」


「えっ………?」


懐かしいソプラノトーンの声。

声のした方を向き、主を確かめる。そこに居たのは──


「ルフレ………さん……?」


「……お誕生日おめでとうございます、リズさん。何も用意できずに、申し訳…」


「うっ……ぐすっ……ルフレさん……ルフレさん、ルフレさん…!」


突然のルフレの帰還。
リズにとって、それは最高のプレゼントだった。リズはルフレにしがみつき、大声で泣き出した。


「お久しぶりです、リズさん」


「会いたかったよ……会いたかったよ…!!」


困ったように微笑むルフレとフレデリクは目を合わせ、くすりと微笑んで泣きじゃくるリズを優しく撫でた。


*****
リズちゃん誕生日おめでとうということで一個目はフレリズ…+ルフレ!

クロム×ルフレ前提のお話です。


  
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