ライムライトの口づけ



それは、突然のことでした。

「ロンクーさん」

姿の見えた、愛しい彼に声を掛けると、彼は木陰に身を委ねて小さく寝息を立てていた。

「あら、眠っているのですわね…」

そっと隣に腰を下ろして、じっと彼の顔を見る。端正な顔立ちだが、寝顔は意外と幼く見えた。

「……………今なら…」

そっと身を乗り出して、彼の唇にそっと自分の唇を重ねようと身を近づけようとして、寸前の所で彼の目が開いた。

「……………!?」

互いにフリーズする。先に動いたのはマリアベルだった。その身をロンクーから離そうとし──離れる前に、腕を掴まれ、引き寄せられる。

「あっ………」

「……………」

ほんの一瞬、微かに唇が触れ合った。

身体から力が抜け、ふにゃりと地面に座り込む。(正確には、ロンクーの膝の上だが)

「………なかなか、可愛いことをするんだな」

「っ…………はしたなかった、ですわね」

「いいじゃないか、その………嬉しかったぞ」

「!」

足の上に座るマリアベルの腰に手を添えて、ぐっと彼女の身体を引き寄せたら、もう一度、今度は深い口づけを。

「ふふ、幸せ、ですわ………」

「ああ、俺もそう思う」


穏やかな風が流れる、束の間の一時で。
私達は初めて、口づけというものをした。



  
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