4章 神剣闘技





「しばしお待ちください。
直ぐに王を呼んで参ります。」



ライミが王を呼びに行った。




「王様は留守なんですね…」


「戦いが好きな方だと聞いている。

大方、闘技場にでも行っているのだろう。」


「なるほど、戦い好きですか……でしたらきっと、筋骨隆々のごつい方なんでしょうね……」


などと想像していると


「誰がごついって?」


「!」


現れたのは気の強そうな、小麦色の肌をした女性だった。


「貴方がフェリアの王か…いや、王でしょうか?」


「ああ、私はフェリアの東の王フラヴィアだ。先程はうちの物が迷惑をかけたね。」


「いや…あ、いいえ。」


砕けた話し方になるのをどうにかこらえ、クロムは務めて丁寧な口調で話す。


「……先程イーリスの名を騙る賊が出没しているとお聞きしたのですが」

「ああ、恐らくペレジアの兵士だ。
イーリスとフェリアを戦わせたいのだろう。」


「やはりペレジアの仕業か……くそっ!

……あ、し、失礼しました。王の御前に……」


「いいんだよ。普段通りの口調で話しな。砕けた話し方しかできないのはお互い様さ。」


どうやらフラヴィアは気さくで話掛けやすいいい人の様だ。


「さて、遠路はるばる来てもらって申し訳ないんだが……いま、兵を貸す事はできないんだ。」


「なっ……!?」


「いまの私には決定権がなくてね…」



フラヴィアの話によると


フェリアでは何年かに一回東西の王を決める闘技大会があるらしい。


東西それぞれの王は代理の者を立て、彼らに戦ってもらう。


勝った方の王が東西を統べる王となり、政治事項の決定権が与えられるらしい。


「昔、王が出て殺されちまってね……血で血を洗う大戦争になったんだ。それ以来、王の出場は禁止なんだ。」


「そうなのか……」


「あんたらが代わりに出て勝ってくれたら同盟を結び兵を出せるんだが、イーリスの王子を出すのも……」


此処でクロム達が出て万が一、クロムが亡くなったなんて事になれば。


それこそイーリスとフェリアで血で血を洗う大戦争になりかねない。


フラヴィアも少し出場させ辛いのだろう。


しかし。


「いや、俺は出る。
こうしてる間にもイーリスの民は助けを待っているんだ。
それを見過ごすわけにはいかない。」


まっすぐ曇りの無い瞳でフラヴィアを見つめたクロムにフラヴィアは頷いて



「ははっ、いい覚悟だ、よし、気に入った!
思う存分暴れてきな!」


と、クロム達を勢いよく送り出した。




クロム達は闘技場へと向かった。










「お兄ちゃん、あれ!!」




敵の大将を見たリズがクロムに慌てて言った。



「ああ、分かっている。」



クロムはさも落ち着いた様子でマルスを見据えていた。



「………………」




マルスは、黙ったままだ。




「お前に聞きたい事がある。」



「…………………」




「だんまりか。まあいい、ならその剣に語ってもらおう。」






そう言って両者剣を抜き、構えた所でまた驚いた。



同じ剣、同じ動作………



流れる様な動きの中に、力強さが混じっている。




間違いなく、イーリス王家の剣技だ。




「お前、その剣技…………

誰に学んだ!?」





しばらく打ち合いが続いた後。





「………父に!」





マルスはそう言ってクロムに剣を打ち込んだ。




「私たちも、戦いましょう!

あのお二方が一騎打ちしている間に。

私たちは、周りを倒しましょう。」




ルフレが魔道書を抱えて駆け出した。





















周囲の敵を片付け、再度クロムとマルスが向き合った。




「マルス、お前の父とは……誰だ」


「すまない、これ以上は言えない。」



「ならば、もう聞くまでもないな。今からは東軍の代表としてお前と戦うまでだ。」


「ふふ、若い頃は随分と血気盛んなんだな……」




やはりマルスは強い。



古の英雄王マルスも流れる様な美しい剣技だったと聞く。




名前に恥じぬ強さだ。





「ぐっ……」


「クロムさん!」


マルスはスッと立ち上がると、ルフレの方へ歩み寄った。


「次は君だね、ルフレ。どちらの技が勝つか、正々堂々戦わせてもらおう。」



魔道書のページを捲る手が止まった。




「どうして私の名を─────」



名乗った覚えは無いはずなのに、などと考えていた、次の瞬間




「戦場で考え事は禁物だ」




ザシュッ!





マルスの鮮やかな剣技がルフレに炸裂した。






「きゃあっ!」


「! ルフレ!!」


駆け寄ろうとしたクロムをルフレは制止した。


「私は、大丈夫ですから……クロムさんは…」



だが、ルフレの顔色は非常に悪い。




今はルフレの為にも早くこの戦いを終わらせるのが先決だ。

そう考えたクロムはマルスの方を向いた。




「……………………マルス。」



クロムは自身の傷口に傷薬を使うとマルスの方を向いた。



「かかって来い……お前の相手は俺だ!」




























「さすがだ……やはり、強いな」






やっとの思いでようやくマルスを撃破した。




ルフレは直ぐに救護班に運ばれて行った。






クロム達の元へフラヴィアがやって来て、笑顔でクロムに言った。


「ありがとう、これでフェリアとイーリスの同盟は成立さ。」


「そうか、それは良かった。」




「ああ、今夜は宴だ。
あんた達も楽しんで行きな!」


フラヴィアは走って行った。





と、そこに




「いやー、完全に負けたな。
勝算はあったんだがな…」


いかつい坊主頭の男性が現れた。



「あんたは誰だ?」


「俺はバジーリオ。フェリアの西の王さ。


ところでお前らの軍師の怪我は大丈夫か?」



マルスに斬られたルフレは思ったよりも傷が酷いらしい。



「ああ。いま仲間の1人が付いて看病してくれてる。



……なあ、あんたの軍の代表のあいつは何者だ?」


「それが俺にもわからないんだ。

いきなりやってきてうちの代表を倒したからな、無理やり口説いた。」


「そうなんだ……あの人、ちょっとかっこいいよね……」


「おい、リズ」


「え、冗談だよー」


「……はぁ。

とりあえず、明日には此処を出る。

今日はルフレも負傷してるしな。」




と、そこへ




「クロム、さん……」



ルフレがやって来た。



「ルフレ!お前、怪我は……」



「大丈夫です。大丈夫ですから早くイーリスに戻りましょう、ね?」


「しかしだな、ルフレ……」



クロムはしばし考えた後、口を開いた。




「…分かった。なら此処を出よう。

ただし、もし屍兵に遭遇してもお前は戦いに出るな。いいな?」


「はい、約束します……」




ルフレは柔らかく微笑んだ。







「……それなら、こいつを連れて行ってくれ。」


バジーリオが1人の青年を連れてきた。


「こいつはロンクー。
剣の腕はマルスと同等だ。」


「へー、強いんだね!」


リズが近寄ろうとすると


「….…女は苦手だ。」



突っぱねられてしまった。



「え?嫌われちゃった?」



リズは不思議そうにしていた。






  
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