プレゼント
「ねえねえ、今度あたしも氷の世界連れてってよ!」
「ミーちゃんはまだ行ったことなかったね。じゃあ今度本買うとき行こっか!」
牧場の真ん中で、一匹の大きな魔物がうつ伏せに寝そべっていた。その横で魔物の体をブラシでこするのは小さな女の子。厳密に言うと魔物が大きすぎてとても小さく見えるだけなのだが。
マスターと呼ばれた少女は魔物に冒険した異世界の話を聞かせているようだ。
「そうそう、ミーちゃんに見せたい物があるの。これなんだけど、ノフォーの町でこんなのが流行ってるんだって!」
「わあ…スッゴい綺麗!マスターこれなあに?」
「夢見のオーブっていうんだってさ」
少女は、一枚のチラシを一匹の魔物に見せた。少女より一回りも二回りもおおきな魔物は、その小さな紙を覗き込む。そこには星降りのオーブに似た形をした、美しく澄んだ空色の宝石が描かれていた。
彼女が言うには、氷の世界では夢見のオーブと呼ばれる宝石が流行しているらしい。枕元に置いて寝ると、いい夢が見られるのだとか。
ノースデンでは聖霊の泉にお供えされていて、イーストリアではプレゼントとして人気があるそうだ。
「35000ゴールドかあ……高いけどマスター頑張れば買えるんじゃない?」
「それがね……」
魔物が尋ねると少女は一瞬視線を逸らし、少しだけ恥ずかしそうに口元を緩めた。
「みんなのために本買ってたらお金なくなっちゃってさ」
「ルカちゃーん、お願いがあるの!」
夢見る卵を磨いていた少年の元に、先ほどの魔物が駆け寄ってきた。その大きな体の両脇に別の魔物を抱えて。
ルカと呼ばれた少年はその様子に目を丸くして、げっと小さく声を漏らした。
「…ミー、突然どうした?なんか色々引き連れて」
右に抱えられているのは、食事中らしかったりゅうたろう。骨付き肉の骨をしゃぶりながらもがいている。左側には二つの腕にもみくちゃにされているプチヒーローのぷっちょ。
「だから急に何なんだよ!まだ食事中だ」
「お、オレつぶれそうだぞ……」
「あーんもう黙ってついてきなさいってば!ルカちゃん今すぐ30000ゴールドくらい貸して!なかったらあたしたちと一緒に格闘場行って!」
数秒後に聞こえたのは、さらに目が点になったルカの「はぁ?」という気の抜けた返事だった。
end.
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ミーちゃんのお話でした!
外見よりは可愛い性格をしているつもりで書いてます。
氷の世界は、世界観といい曲といい大好きです。
0119追記:話が変だったので一部編集しました。
補足説明…彼らの意識では格闘場=お金稼ぎ
10.01.18
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