裏切りと笑顔
孤独。
それは彼の人生そのものだった。
"最強"と謳われた魔法使い。
その強さ故、誰からも恐れられ、誰からも蔑まれてきた。
いつから、こうだったかは彼自身も知らない。
ただ気付いたときには、周囲は疎むような視線しか無かった。
もう、孤独には慣れた。
彼は思う。
初めは、人が愛おしくてたまらなかったが、そんな感情ももうとうの昔に捨ててしまった。
ふと、左肩が気になり、右腕で軽く押さえた。
とうに治ったはずの傷。
だが、時々痛みのような疼きをみせた。
―あの日、ついた傷跡。
少年が、孤独を選んだ日だった。
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