凰鬼が小さく舌打ちをすると、少年の上から慌てるように離れた。
莎夜の短剣が、一瞬前まで凰鬼がいた空を切った。
「駄目だよ、莎夜。
背後から攻撃なんて」
凰鬼がそんなことを言っている間も、莎夜は容赦なく短剣を振り回す。
「何より、今は此の吸血鬼と勝負してるんだから、」
凰鬼は莎夜の突きを体を捻って避けると、肩を掴んだ。
「…邪魔しないでね」
幼い子供に言い聞かせるような口調で、拳を作った手を、莎夜の腹に叩き込んだ。
「かッ…ぁ」
短剣がカラン、と落ち、莎夜の体は大木にもたれるように、倒れた。
「…さて、と」
もう体勢を取り直した少年に、凰鬼は向き直る。
「再開といきますか」
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