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成也についていくと、そこはあの日彼の浮気現場を目撃してしまった保健室だった。
「…………」
「入れよ。」
ドアの前で立ちすくむ僕にはお構いなしに、彼は一人部屋に入っていく。
「それで、何?」
よく先生が使っている椅子に腰掛け、めんどくさいといった様子で成也がこちらを見遣る。
「……この前、ここで抱いていた女の子は…成也のなに?」
「…あぁ、セフレ。」
「――っ!?」
さも当然のようにそう言い切る成也に、何かで頭を殴られたような衝撃を受けた。
「それだけか?」
何も言えない僕に、話が終わったならば帰るといった態度で成也が立ち上がる。
「せ、成也は僕と付き合ってるんじゃないの!?セフレなんて、そんなの浮気じゃないかっ!!」
帰ろうとする成也のシャツを掴み、必死に引き止める。
「じゃあ別れるか?」
「え…?」
こちらに振り返った成也にそう言われ、一瞬何を言われたのか解らなかった。
「セフレがいるのが嫌なら別れるか?言っとくけどセフレはあいつだけじゃねーし、これから好みの奴に誘われたら普通に寝るし、それが嫌ならお前とは終わりだ。」
「…………」
「俺は誰かに縛られるのが嫌なんだよ。」
「………成也は…僕のことどう思ってるの?少しも恋愛感情は…ないの?」
震える声でそう言って、でも成也の顔を見つめる勇気はなくてそっと俯いた。
「恋愛感情はねーな。」
そんな僕の頭上から残酷な言葉が降り注ぐ。
「お前みたいなタイプ初めてで面白そうだったし、最初はそれなりに楽しんでたけど、なんかそれも飽きてきたわ。」
成也と付き合って3ヶ月、僕の幸せな時間はこうして呆気なく終わりを告げた。