10
「渉、おはよう。大丈夫か?」
数日ぶりに登校した僕を見つけて、親友の杉村が駆け寄ってきた。
「うん、もう大丈夫。休み中プリントとかありがとな。」
僕が休んでる間のプリントや連絡は全て彼が届けてくれていた。
「その、あいつとは…」
一度見舞いに来てくれた杉村に成也はどうしたと聞かれ、堪えきれなくなった僕はあの日見た事を話した。
その事に杉村は怒り、あいつと別れろと散々言われたけれど、僕はまだその決心がついていなかった。
実際、あの日以来成也と連絡を取ってないし会ってもいない。
「う…ん、まだ…」
そう言いかけた時、教室の後ろのドアからちょうど成也が入ってきた。
その瞬間確実に目があったはずなのに、まるで僕を無視して自分の机へと向かう成也。
「あいつっ…!?」
その態度に杉村の怒りがさらに膨れ上がり、僕は成也の方に行こうとする彼を慌てて止めに入った。
「杉村ちょっと待って!」
「なんだよ!?あいつの態度見ただろ、お前のこと気付いたくせにシカトしたんだぜ?」
「そ、そうだけど…。でもこれは僕と彼のことだから、僕がちゃんと彼と話すよ!」
強く言いきると杉村がじっと僕の目を見つめ、やがて観念したように視線を反らした。
「わかった。なんかあったらすぐ言えよ?」
「うん、ありがとう。」
杉村の言葉に背中を押されるように、僕は自分の席から窓の外を眺める成也の目の前に立った。
「成也、話しがあるんだけど…。」
「……ああ。」
そう言って席を立ち、歩きだした彼の後をただただ黙ってついていった。