朝丘未央 編 (雄志×未央 4)
そんな状態が何週間も続いたある日。
夏川君とお昼ご飯を食べていた所に、僕の知らない一人の女子生徒がやって来た。
「ねぇ夏川、いい加減に富田に返事するよう言ってくれない?」
「ぐっ、げほ…!」
突然富田君の名前が出てきて、僕は思わずむせてしまった。
「おい朝丘大丈夫か!?…なんだよ、あいつまだ返事してねーの?」
「そうなのっ!もう美紀が可哀相!!」
僕の背中を摩ってくれながら女子生徒と話をするのを、僕もそっとその様子を窺っていた。
「あ〜まぁ俺からも言っとく。」
「うん、よろしくね〜」
そう言うと彼女はちらっと僕を見るとその場から去っていった。
「……あの…富田君がどうかしたの?」
聞こうかどうか迷ったけどやっぱり好奇心には勝てなくて、僕は思い切って夏川君に尋ねてみた。
「ん?あぁ…。なんかさ、さっきの子の友達が富田に告ったらしいんだけど、あいつ返事してないらしいんだ。」
「えっ…?」
一瞬頭が真っ白になった。
(告った?あの子の友達が富田君に…?)
「富田君ってモテる…の?」
「まぁな〜。なんであんな奴がいいのか知らないけどさ。この前だって…」
隣で夏川君が何か話していたけど、全然頭に入ってこない。
富田君を好きな女の子がいる。
もしかしたらその子と付き合うのかもしれない。
(あれ?なんだろ…なんか苦しい…。)
富田君のあの笑顔を思い浮かべた瞬間、きゅっと胸が苦しくなった気がした。