「たったふたり」設定で梅色様が書いてくださいました…!
本編「Saudade」の少し前の日のお話です。

* * *

 xxxx年x月x日。私は黄土色の砂が広がる大地に降り立った。空は突き抜けるような青。流石乾燥地帯と言ったところで、その空には雲一つ無かった。乾いた風に、火傷してしまいそうな陽の光。勿論草木なんて生えておらず、生気という言葉が似合わない土地。
 ここに住む者は皆一掃せよ、との命が国のトップから下っていた。そして今、国軍の手によってそれは実行されつつある。
 そんな砂漠に、軍人でもない私がなぜいるかというと、それは自分が『戦争ジャーナリスト』という肩書に誇りを持っているから。戦争の酷さや辛さの全てを多くの人に知って欲しいからこそ、私は危険を顧みずこの戦場にいるのだ。
 しかし軍人のする事に反発しているのと変わらない活動内容のため、彼らにかなり疎まれている。国軍上層部の心中は大体、そんな事じゃなくて戦争のプロパガンダでも綴ってくれ、なんて感じなのだろう。
 互いに無視を決め込み、それぞれ接触を極力避ける日々が続いていたある日の事だ。
「生きて還る、と、それだけを考えろ。」
軍のキャンプ地の一角に見合わない、そんな言葉が響くのを、私は偶然に聞いた。それは若さを感じさせる女性の声だった。
 興味をそそられた私は、他の人間に見つかってしまわないように気を付けながら、保護色となる黄土色の外套を掻き抱いて、カメラとメモとペンだけを持ってそちらへ駆け寄る。物騒な外見の軍用車両の影から覗くと、先程と同じ声が「解散」と丁度整列していた兵士達を散らしたところだった。
 そしてその声の持ち主を、少し高い木製の台の上に見つけて、私は息を呑んだ。だってあれは、まだ少女じゃないか。
 東の血統を感じさせる、少し低い鼻と丸っこい目。いたいけ、という言葉をそのまま形容したようなその姿に、私は強く心を惹かれた。そして、そんな少女を戦争に使う軍に酷く憤慨した。
 近くに誰もいなくなると、彼女は一人溜息をついてテントに戻っていく。
 私は彼女の事が知りたくてたまらなかった。彼女と話がしたかった。

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